浪人仁さんふらり日記

殺陣好きの役者にござる。拙者が興味を持った事を江戸言葉を交えながら記述致すでござる。

仁さん夢物語☆八 散歩・・・

梅雨である。
七月も終わりに近付いたというのにまだ梅雨である。
たいしてじめじめしているわけでも蒸し暑い分けでも無くただ毎日雨が降る。土砂降りにはならぬのだが、やはりこう気分が晴れない。
時折青空が見えるからやるせない。
早く梅雨が明けることを祈るでござる。

さて、夢物語始まりでござる☆

ちょ~ん♪(拍子木の音♪)

ここは浅草。浅草寺仲見世から横にそれた伝法院通りである。仲見世通りに比べればいくらかすいている、気がする。
何時ものようにぶらぶらしながら物売りと客との遣り取りを見たり顔見知りの店先で茶を御馳走になりながら世間話しをしたりするのが日課である。
が、今日は何時もと勝手が違う。と、言うのも、
娘『春風様!春風様!ほら、猫♪』
仁『・・・』
ついて来てしまったのだ。“座敷娘”が。
この“座敷娘”は、先日拙者の家に無理矢理棲みついた『妖怪』である。
元は幸せを運ぶと言われる『座敷童』だったのだが、どういう訳かここ数百年で人間でいう15、6の娘の姿にまで成長してしまったのだという。そのせいで仲間からのけ者にされ行き場を無くし何故か拙者を頼って来たのだ。
娘『ねこちゃん可愛い♡ね、春風様。』
仁『猫など何処でもおるではないか。』
娘『なにを仰せです。この猫ちゃんは他におりませぬ。人と同じで皆それぞれ違うのですよ。』
仁『ぬ。確かに。』
娘『ではこの猫ちゃん、飼ってもよろしいですね。』
仁『何故そうなる!?』
そこへ同じ長屋に住む大工の佐吉が通りかかった。
佐『何やってんですかい旦那。猫に話しかけたりして。』
仁『おお佐吉か。いや、この娘がな』
佐『娘?』
仁『!(そうか、あやつ姿を消しておるのか。と、言うことは・・・)』
通行人達『あの御浪人さん、猫に話しかけてるよ。』『きっと独り身で寂しいんだろうね。』『可愛そうに』『ひそひそひそ。』
仁『(やっぱり・・・)』
佐『旦那。旦那、大丈夫ですかい?』
仁『ん、ああ。実はこの猫を飼おうかと思うてな。』
佐『また飼うんですかい!もう旦那ん家にゃ一匹いるじゃねえですかい。』
仁『あ(そう言えばあやつがおった。)つい可愛くてな。(座敷娘の方に)残念じゃが家には一匹おるからもう飼えぬ。分かったな。』
佐『旦那、誰に言ってんです。』
仁『なに猫にの。』
佐『猫に?』
仁『それより佐吉。仕事はよいのか。』
佐『いけねえ、急がなきゃ。それじゃ旦那、あっしはこれで。』
そう言うと佐吉は足早に去って行った。途端目の前に座敷娘が現れる。
仁『うわっびっくりした!』
娘『春風様の意地悪。何故この猫ちゃんを飼ってはいけないのですか。』
仁『家にはお主とあのヘンテコな生き物がおるのに、この上猫までは飼えぬ。我慢致せ。』
娘『もじゃちゃんと猫ちゃんは違います!』
仁『兎に角駄目なものは駄目じゃ!』
娘『・・・分かりました。御免ね猫ちゃん。またね。』
ごねるかと思ったが案外素直である。
仁『ふう(やれやれ。)』
娘『あ!春風様、お団子♪』
そう言うと座敷娘はスパッと団子屋に。
なんと変わり身の早いことか。猫のことなどもう気にもしていない・・・
仁『待て待て(姿が見えぬのにどうする気じゃ)』
娘『御団子二皿くださーいな。』
団子屋『はいよ、毎度あり~!』
仁『(見えてるー!?)』
この後も座敷娘に振り回され散々な目にあった事は言うまでも無い。
この先一体どうなることやら。
先が思いやられる・・・。

ではまた次回☆
これにて御免(≧▽≦)

ちょ~ん♪(拍子木の音♪)
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