浪人仁さんふらり日記

殺陣好きの役者にござる。拙者が興味を持った事を江戸言葉を交えながら記述致すでござる。

仁さん夢物語☆九 てんやわんや

長梅雨でござる。
今日もきょうとて♪あーめがしとしと降っていた~。
カビが生える。拙者に☆

では夢物語始まり始まり~☆

ちょ~ん♪(拍子木の音)

蝉がせわしくなく夏の午後。
今日は拙者行きつけの町道場からお声がかかり久し振りに剣(木刀)を振りに出向いている。町道場、と言っても限りなく町外れにあるのでそこへ剣術を習いに来るものと言えば町人、博徒、百姓が主で時折大店の若旦那や庄屋の倅が顔をだす程度である。
こう見えて拙者は些か腕に覚えがある。それだけに町人、百姓相手では物足りぬ。物足りぬがいくらかにはなる。拙者は今、多少なりとも稼がねばならぬ。
そう!居候が増えたからだ!
あのヘンテコな生き物(拙者は“ねこ”と呼んでいる)はまあ仕方が無い。だが驚いたことに、あの娘、座敷娘も食べるのだ!御飯を!妖怪なのに!
それ故拙者は稼がなくてはならなくなったのだ・・・
さて、道場を後にしたのは日が傾き始めた頃である。
炎天下の日中に比べると大分涼しい。吹く風が心地よかった。
長屋に着いた途端佐吉が勢いよく飛び出してきた。佐吉は大工で拙者の隣に住んでいる。
佐『あ!春風の旦那!聞いてくだせえ!めざしがこれになりやした!』
そう言って佐吉は一分銀を見せた。
仁『一分銀。めざしがか。』
佐『あっしも驚いたのなんのって。めざしで一杯やろうと思って酒をとりに行って戻ったらめざしがこいつに化けてやした!』
仁『そんな馬鹿な。』
佐『こいつはきっと神様が下さったに違えねえ。ありがてえありがてえ☆
てなわけで、あっしは今からこいつを元手に一稼ぎしにいってめえりやす。なあにスッても元はただのめざしだ。猫に取られたとおもやあどうってことねえってもんだ。それじゃ旦那、あっしはこれで。』
佐吉はそう言うと意気揚々と走り去った。
仁『神様のう・・・』
なんとなく嫌な予感がしながら拙者は戸を開けた。
仁『ただい・・・』
娘『ほーらもじゃちゃん。お魚ですよー。』
も『にゃー♡』
ぬ、めざし!?
仁『それはどうした。』
娘『あ、春風様、お帰りなさいませ。お稽古は如何でございましたか。』
仁『稽古はいつも通りじゃ。それよりその“めざし”はどうしたのだ?』
娘『これでございますか。お隣様からいただいて参りました。』
仁『隣から(やはりそうか)』
娘『あ、でも盗んだわけでは御座いません。ちゃんとお代はおいて参りました。』
仁『さようか。しかしお主、よく銭を持っておったな。』
娘『それが春風様のお留守の間に御屋敷の掃除をしておりましたら不思議なことに行燈の下から出て参りました。』
仁『な、行燈の下!?(それは拙者のへそくり~。)』
娘『おかげでお魚を買うことが出来てよかったですわ。もじゃちゃんもお腹をすかせておりましたから。』
仁『・・・さようか』
そうか、佐吉の一分銀は拙者のへそくりであったか。通りで胸騒ぎがしたわけだ。そうか、そうだったのか・・・
拙者の一分ぎーーーん(T T)
ん?“もじゃちゃん”・・・
仁『お主そやつ(ヘンテコな生き物)を“もじゃちゃん”と呼んでおるが、もしやそやつの姿が見えるのか?』
娘『?当たり前ではございませぬか。なにをおかしな事を仰っているのです。』
長屋の連中には“猫”に見えるようだが成る程、妖怪には正体が見えるのか。とするとあやつ(ヘンテコな生き物)も妖怪の類いなのか。考えてみればこのような毛むくじゃらで黒眼鏡をした生き物が現世のものとは疑わしい。妖怪の類いであれば得心がいく。
娘『よしよし、かわいい“猫”ちゃん♡』
仁『ねこ!?猫に見えるのか!』
娘『先程からどうなされたのです。何処から見ても毛がふさふさの猫ちゃんではございませぬか。』
仁『さ、さようか・・・』
妖怪にも猫に見えるのか。ではこやつ(ヘンテコな生き物)はいったい。
そこへ先見屋がやってくる。
先『旦那ー!』
咄嗟に姿を消す座敷娘。
先『あれ~誰かいると思ったんだけどなー。あー!もじゃちゃん元気だったー♡♡♡』
仁『もじゃちゃん・・・』
先『そういや旦那、さっきまた“のねずみ小僧”が出たみたいですよ。』
仁『のねずみ小僧。あー、あの間抜けな盗っ人か』
の『ひでー言われようだな。』
仁、先『!?』
のねずみ小僧が天井からこちらを覗いている。
仁『な、な、な!何時からそこにいた!』
先『役人!お役人様を呼ばないと!』
の『ちょちょちょ、ちょっと待ったちょっと待った!あっしは別に盗みに来たわけじゃねえですよ。』
仁『では何をしに来た!』
の『つれねえなあ。お忘れですかい?一緒に呑みてぇって言ったじゃねえですかい。』
仁・先『はあ?』
の『で、呑みに来ましたぜ。』
そう言うと、のねずみ小僧はストンとおりてきた。まがいなりにも盗っ人。身軽である。いつもと違うのは千両箱ではなく酒徳利を持っていることだ。
の『こいつは盗んじゃいませんよ。ちゃんと買ってきたもんでさあ。』
先『灘の酒じゃないですか!』
の『お!そっちの兄さんいける口だね。まーいっぺえやんなせー。』
先『ありがとうございます!旦那。せっかくなんで呑みましょ呑みましょ♪』
仁『・・・』
そしてどんちゃん騒ぎは始まった。
途中佐吉(拙者の一分銀を元手に稼ぐつもりだったが全部スッた)も加わり狂乱の宴は夜通し続いた。
拙者もやけくそでへべれけになるまで呑みまくった。途中、座敷娘もいた気がするがもうそんなことはどうでも良い。
まったく、てんやわんやの一日であった。

ちょ~ん♪(拍子木の音♪)

ではまた次回☆
これにて御免( ´艸`)
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