浪人仁さんふらり日記

殺陣好きの役者にござる。拙者が興味を持った事を江戸言葉を交えながら記述致すでござる。

仁さん夢物語☆十二 浪人☆

今日のおやつはこれだー!
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いくつか種類がござるがやはり昔からある真ん中の赤いの!これが一番!
例のように牛乳がよく合う☆
ヽ(≧▽≦)/あうー☆
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♪キャラメールコオ~ン
♪ホホウ ホホ~

じゃ、『夢物語☆』はじまりでござる☆
ちょ~ん♪(拍子木の音)

先『さー旦那。早く早く。』
今日は恒例の『先見屋が拙者に御馳走する日』である。
なぜか此奴は拙者に御馳走する事を楽しんでいる。
よくわからぬが拙者にとっては有難いことこの上ない。
ただ何時もより先見屋が浮かれているように見える。さては何か“お目当て”があるのかも知れない。
仁『まてまて。店には話をつけてあるのであろう。ならば急ぐ事もあるまい。』
先『駄目です!急がないといなくなっちゃいます!』
仁『いなくなる?なにがじゃ。』
先『いいから旦那、急ぎましょう!』
仁『ははー。さては先見屋。お目当ての女中でもおるのか。』
先『は!?そ、そ、そ。そ、そ、そ、そんなわけ無いじゃないですか。』
仁『にやり』
先『は、早く行きましょう!』
仁『はははは。』
と、道の真ん中に人集りが出来ている。何事であろう。
先『あら何でしょうね。』
仁『さて、何事かの。』
先『ちょいと聞いてきますね。』
そう言うと先見屋は人集りの中へ。そして直ぐに駆け戻ってきた。
先『旦那だんな、旦那の出番ですよ!』
拙者は訳も分からず先見屋に手を引かれるがままに人集りの中へ。
その中心には浪人が一人、直立不動で空を仰いでいる。
先『あの御浪人様、半時以上もあのまんまなんですって。』
仁『半時?』
先『ええ。聞いた話じゃあの御浪人様、ふら~と現れて空を見上げたと思ったらそのまんま動かなくなっちゃったそうで。』
仁『なぜじゃ?』
先『さあ。てなわけで旦那。お願いします。』
仁『は?』
先『は?じゃありませんよ。相手は御浪人様。何かお考えがおありかも知れませんし下手にあたしらがお声を掛けて『無礼者!』ってバッサリってこともあるかも知れないじゃないですか。そこはそれ、餅は餅屋で御浪人様同士、旦那にお願いするのが一番!と思いまして。』
仁『面倒じゃのう。』
先『さ、旦那。いったいった♪』
此奴、面白がっておるな。まあこのままにしておく訳にもいかぬし仕方ない。
仁『そこの御仁。このような往来で如何なされた。』
浪人『・・・』
仁『御仁。』
浪人『・・・』
仁『?』
返答がないどころかピクリとも動かない。
仁『何か困ったことでも・・・』
そう言って近付いた途端、
浪人『(ぱったり)』
その場に倒れてしまった。
全員『わー!!!!!』


浪人『ガツガツ!むしゃむしゃ!ごくごく!ぷはー♪』
ここは先見屋が『拙者に御馳走する日』の為に用意した料亭の座敷である。
そしてこの“豪快に喰いまくっている者”こそ、先程まで道の真ん中に突っ立っていた浪人である。
まあ察しの通り流れ者で路銀はとうに底を尽き五日も飲まず食わず。どうにか江戸に辿り着いたはいいが空腹のあまり身動きとれなくなり立ったまま気を失いあの騒ぎとなった。
と言うわけである。
詳しい事はあとで聞くとして取り敢えずは『飯だ!』と言うことになった。
先『そんなに慌てなくても誰もとりゃしませんから、ゆっくり召し上がって下さい。』
浪人『忝い!忝い!忝い!』
先『旦那も遠慮無くやって下さい。なんたって今日は旦那の日なんですから☆』
仁『旦那の日(そう言う宴なのか)』
浪人『ふー。喰った喰った。いや誠に忝い。お陰で助かった。この恩は必ずお返し致す。』
先『いいですよそんなの。あたしが好きでやってる事ですから。』
浪人『誠に忝い。申し遅れたが某、名を片桐壮九朗と申す。』
先『あたしは『よろず先見屋』の店主で名前は・・・面倒なんで先見屋と呼んで下さい。こちらは春風様。あたしを懇意にしてくださってる方で剣の達人です。』
片『春風殿、先程はお手数をおかけ致した。改めて礼を申す。』
仁『困ったときはお互い様。礼には及ばぬでござるよ。』
片『忝い。』
先『ところで片桐様はどちらからいらしたんです。みたとこ長旅だったご様子ですけど。』
片『詳しくは言えぬのだが西から、とだけ申しておこう。』
先『西から。で、江戸にどなたかお知り合いでもいらっしゃるんですか?』
片『済まぬ。それも言えぬのだ。』
先『何か事情がおありなんですね。よかったらあたしが・・・』
仁『先見屋。』
拙者は先見屋を制した。
仁『この者が立ち入った事を聞きもうした。申し訳ない。』
先見屋はよかれと思って聞いたのである。力になれることがあればと。いわば親切心である。
それは分かっている。
だが人にはそれぞれ事情があり誰にも言えぬ事もある。侍(浪人)ならなおの事である。
片『助けて頂いておきながら何も申せないのは誠に心苦しいのだが・・・』
先『いえいえお気になさらないで下さい。じゃ、お代は払って下さいね☆』
仁・片『なぬ!?』
先『冗談ですよ、冗談。あっはっはっはっ☆』
そんなこんなで宴もお開きとなり片桐にうちに泊まれと誘ったのだが断られ、先見屋も同様に断られた。二人とも頑なに断られた。
そして片桐は深々と頭を下げると夜の闇へと消えて行った。
長屋に戻ると丁度縁日から“よめ(座敷娘)”が帰ってきた。呉服問屋『錦屋』の娘すみと仲良くなり茶店に行ったり芝居見物に出掛けたりするほどだ。
その土産話を延々と聞かされ床についたのは明け方近くであった。
次の日。
目覚めたのはもう昼近く。よめはもう何処かへ出掛けたようだ。
頭が重い。昨日の酒がまだ残っている。
井戸で顔を洗おうと外に出てびっくり!
片『おお春風殿!おはようでござる!』
仁『な、な。』
なぜお主(片桐)がここにいる!?←声にならない。
大家『おや春風様。ずいぶん遅いお目覚めで。』
仁『お、お、大家殿。此奴は、此奴は、』
大家『ああ。この方は片桐様と言って今日からこの長屋にお住まいになりますのでどうぞよろしくお願い致します。』
お住まいに、なる・・・!?
片『春風殿。よろしくお願い致す!』

長屋がまた賑やかになった・・・。

ちょ~ん♪(拍子木の音)

ではまた次回☆
これにて御免(≧▽≦)☆