浪人仁さんふらり日記

殺陣好きの役者にござる。拙者が興味を持った事を江戸言葉を交えながら記述致すでござる。

仁さん夢物語 二十五 

片『春風殿。釣りに行きましょう☆』
そう言って朝っぱらから拙者をたたき起こしたのはこの長屋に住む浪人・・・いや、何処かの家中の侍で片桐と言う者である。
藩の用意した屋敷より長屋暮らしが気に入っているらしい。
眠い目をこすりながらごそごそと釣り竿を手に例の池へと歩いて行く。
調子の良いときには2尺ほどの鯉が釣れるのだが普段は小振りの鮒二、三匹がせいぜいである。
片桐は何時ものように他愛もない話しを楽しげにしている。
そう言えば近頃家中の侍らしき者が片桐を訪ねては楽しげに話しをしているようだ。
片桐の人柄か人を惹きつけるのであろう。
片『春風殿。』
不意に片桐は真剣な面持ちになった。
仁『如何した?』
片『およめ殿との祝言はいつ挙げるでござるか?』
仁『ぶっ、祝言!?』
遠くで鯉が跳ねた。
片『如何にも。およめ殿との中をこのまま有耶無耶にしておくわけにはいかぬでござろう。』
仁『片桐殿、何を申される。前にも話したが、よめは知人から預かった娘でそのような仲では』
片『嘘でござろう。』
鋭い。どうした片桐。何時もと違うぞ。
片『お二人を見ておれば一目瞭然!誠に仲睦まじいことで。』
仁『いやいや、先程も申したがよめとはそのような仲では』
片『問答無用!漢なら潔くなされよ!』
いったいなんなのだ今日の片桐は。
はっ!?まさか・・・
仁『夫婦喧嘩でもなされたか?』
片『ふぐっ!?あ~!』
片桐はその場に泣き崩れた。
図星か。
聞けば昨晩酒のアテにめざしを食べていたところそれは明日の朝餉だと言われついカッとなり言い争いとなった挙げ句屋敷を叩き出されたそうだ。
片『拙者がそんなに悪いのか!たかが目刺しを一匹囓っただけで!それが屋敷から叩き出すほどの事にござるか!?』
下級武士の給金などたかがしれている。家計を切り盛りする奥方にしてみればたかが目刺し一匹と言えど一大事な事である。
が、そんなことで屋敷を叩き出すとは。
手厳しい奥方である。
その後も片桐の愚痴を散々聞かされ挙げ句飯屋で酒を奢り多少機嫌がなおったところで長屋に放り込んだ。
やれやれ。とんでもない一日であった。
仁『すまぬ。おそくなっ』
ごつ!(急須が拙者の頭に当たる音)
仁『な、何をする!?』
よ『何をするではございません!こんなに遅くまでいったい何処をほっつき歩いていたのですか!』
仁『いや、片桐殿と一緒に』
よ『言い訳無用!そこにおすわり下さい!』
このあとよめの小言を朝まで聞かされるハメになった。
厄日だ・・・

ちょ~ん♪
それではまた次回☆
これにて御免♪