浪人仁さんふらり日記

殺陣好きの役者にござる。拙者が興味を持った事を江戸言葉を交えながら記述致すでござる。

仁さん夢物語☆十六『親』

近頃甘いものが欲しくなる。
今に始まった事ではないが甘いものを食べると幸せを感じる☆
特に『あんこ』
ぼた餅(おはぎ)を食べると幸せ過ぎて天にも昇る気持ちになる( ´艸`)☆
あんこともち米の醸し出す素敵なハーモニー☆
ああ~ぼた餅バンザイヽ(^o^)丿

然らば『夢物語』始まりで御座る~☆

片『春風殿。釣りに参りましょう☆』
片桐が何時もの様に朝も早くから釣りに誘いに来た。
よ『春風様。今日こそお魚をお持ち帰りくださいましね♡』
仁『まかせておけ。』
片桐が誘いに来て座敷娘に見送られる。いつの間にか"何時もの事"になっている。
不思議なものだ。
チリーン
近くに托鉢の修行僧でもいるのか、鈴(りん)の音が聞こえる。
よ『さ。春風様もお出かけになられたし、もじゃちゃん♡』
何時もなら呼べば駆けより飛び付いてくるはずのもじゃ(ヘンテコな生き物)だが珍しく姿がない。
よ『もじゃちゃん?どこかへ出かけてしまったのでしょうか。』
座敷娘はなんとなく不安な気持ちになり、もじゃ(ヘンテコな生き物)を探し始めた。

片桐と共に何時もの道を何時もの池へと歩いていく。
"のねずみ小僧"の一件から十日ほどが経っている。
人違い(のねずみ違い)だったことで流石に数日抜け殻の様になっていた片桐だが国から金子が届いたことでどうにか気を取り直したようだ。
まあ役目で来ておるのだから国から金が出るのは当然である。
片桐自身も腹を決め暫く江戸で手掛かりを探すことにしたらしい。
片『ふんふんふ~んふんふんふ~ん♪』
鼻歌交じりで歩く片桐の背を見ていると本気で捜す気があるのか疑わしくなる・・・。
池についてみると珍しく誰もいない。普段なら顔見知りが一人、二人いるのだが。
片『春風殿は生まれはどちらでござるか?』
釣り糸を垂らし暫くすると不意に片桐が訊ねてきた。
仁『ん。』
片『いやなんとなく生粋の江戸者ではないような気が致してな。』
仁『ああ。豊前でござる。』
片『おお、さようか。拙者の国元とちこうござるな。どことは言えませぬが☆』
仁『片桐殿も九州のどちらかで?』
片『ふっふっふっ。さあて、どうでござろう☆』
仁『・・・(近頃拙者を弄ぶ者がふえてきたな)』
片『ときにご家族は如何してござる?』
仁『父は拙者が幼き頃に流行り病で。母は姉と妹と共に庶民として暮らしてござる。』
片『なんと!すると家督は?』
仁『父が亡くなったおりに武家はやめたからのう。拙者は血の気が多かった故、十九で武者修行と称して旅に出てそれきりでござるよ。』
片『さようでござったか・・・心配ではござらぬか?』
仁『なんの!拙者の母上はじめ家族皆強者でござるから一切心配ござらん!』
片『ははは!春風殿の家系は逞しいのでござるな☆』
よ『なにをお話です♡』
仁・片『びくっ⁉』
片『よ、よめ殿。いつの間に。』
突如として現れたよめ(座敷娘)に拙者達は心の臓が口から飛び出るほど驚いた。
仁『・・・(また姿を消しておったな)』
よ『うふふ☆楽しそうでしたがどんなお話をなさっていたのです?』
片『春風殿の国元の話でござるよ。』
よ『まあ!わたくしもききとうございます!』
仁『もう一通り話おわっ』
よ『最初からもう一度!!!』
仁『いや、だからもう』
よ『さあ!』
こうなると"よめ(座敷娘)"は一歩も引かない。
めんどくさい・・・。
片『と、ところでよめ殿はどうしてここへ?』
拙者の気持ちを察し片桐は話をすり替えた。いいぞ片桐!よくやった!
よ『そうでした!もじゃちゃんがいなくなったので捜しているところでした!』
もじゃちゃんとは先見屋に押し付けられたへんてこな生き物(拙者以外の者には猫に見える)の事である。ちなみに拙者は『ねこ』と呼んでいる。
仁『いなくなった?』
よ『春風様がお出かけになられた時から姿が見えずお屋敷(長屋)の周りを捜してみたのですがどこにも・・・』
確かに珍しい。ヘンテコな生き物はいつも長屋に居て座敷娘にべったりなのだが。
よ『さ、春風様も!どうせお魚など釣れないのですから一緒にもじゃちゃんをお捜しください。』
仁『何を言う!今から本気を出す・・・』
よ『捜しますよ(ギロリ)』
仁『はい。』
よ『では片桐様。御免あそばせ☆』
片『はあ・・・。』
拙者は座敷娘に無理矢理連れ去られてしまった。
片『春風殿・・・お気の毒。』


もじゃ(ヘンテコな生き物)がいそうなところを捜してみるが見つからない。
どうやら本当に何処かへ行ってしまったようだ。
よ『もじゃちゃんいったいどこに行ってしまったのでしょう。親元にでも帰ってしまったのでしょうか。』
仁『親元、か。』
あのヘンテコな生き物にも親があるのか疑わしい。
ふと妖怪にも親がいるのだろうか。座敷娘の横顔を見ながらそんなことを考えていた。
よ『春風様?どうなさいました。わたくしの顔に何か付いてございますか。』
仁『ん。いや、お主にも親はいるのかと思うてな。』
よ『まあ。何を仰せです春風様。妖怪とて親はおりまする。』
仁『さようか。ではおぬしの親はやはり座敷童か。』
よ『雪女です。』
仁『雪女⁉』
よ『はい。母は雪女、父は』
仁『雪男!』
よ『河童です。』
仁『かっ・・・(河童⁉)』
よ『わたくしたち(妖怪)は人の様に生を受けるのではありませぬ。人や獣が変化したものや古き物に魂が宿ったもの、純粋に闇から生まれたものなど様々です。』
物や獣は時が経つと妖怪になるとか、人は恨みや怒り、悲しみで鬼になるとか。そう言えば昔、どこかの寺の住職がそんな事を言っていた。
一口に妖怪と言ってもなかなかに複雑なようである。
よ『わたくしはどうやら闇から生まれたようです。闇の中に突然現れたわたくしを父と母が拾い座敷童として育ててくれました。それなのに・・・』
仁『・・・。』
よ『春風様。わたくしはいったい何者なのでしょう。』
よめ(座敷娘)は寂しそうな何とも言えぬ笑顔を見せた。
座敷童として育てられたはずがその道を外れいまや己が何者なのかさえわからぬとは。何とも切ない話である。
目の前にいるこの妖怪が儚く哀れに思える。
よ『(溜息)・・・そんな些細なことはいいとして。』
いいのか⁉
よ『もじゃちゃんどこに行ってしまったのでしょう。』
そっちの方がどうでもいい!!!
よ『春風様。もじゃちゃんが行きそうなところに心当たりはございませんか?』
今し方までのやり取りはいったい・・・。
よ『春風様だけが頼りです!さあ、心当たりを思い出してくださいませ!』
仁『う~むそうじゃな~。心当たりと言えば・・・おお!先見屋か。』
よ『先見屋様!そうでした。もともともじゃちゃんの飼い主は先見屋様でございましたね☆』
ほぼ忘れていたが、もともと"ねこ(ヘンテコな生き物)"は先見屋のところに居て拙者が(先見屋に)押し付けられ飼うことになったのだ。
その事は以前、座敷娘に話してある。
よ『さあ春風様、先見屋様のところに急ぎ参りましょう☆』
そう言えばこのところ色々あって(のねずみ小僧の騒動)先見屋に会っていない。別段会いたい訳ではないがあんな顔でもしばらく見ないと気にはなるものである。
よ『もじゃちゃん、先見屋様のところにいるといいですね。さ、急がないと日が暮れてしまいますよ!』
いや、まだ昼前じゃ。
よめ(座敷娘)に急かされながら先見屋に着いたのはちょうど昼であった。店の中から何やらいい匂いがする。
よ『さっきみーやさーん、こーんにーちは~☆』
店先からよめが声をかけた。すぐに奥から返事が聞こえた。聞き慣れた(聞き飽きた)先見屋の声である。
先『はーい。あらおよめちゃん♡旦那もご一緒で。』
よ『卒爾ながらお訊ね致しますが・・・』
先『もじゃんですね。来てますよ。』
よ『よかったー☆』
先見屋の話では朝方突然店に飛び込んでくるなり押し入れに入り込み出てこないそうである。
先『開けようにも中で踏ん張っててどうしようもないんです。と言うわけで取り敢えず昼餉にしましょう♪』
出てきた膳には見た事もない食べ物が。おそらくあの恐ろしい"未来国"の食べ物に違いない。
先『これは未来の食べ物で”かれーらいす”っていいます。あちらじゃ子供から大人まで嫌いな人はいないっていうと~ってもおいしい食べ物なんです☆さ、どうぞ召し上がれ♡』
仁『・・・』
見るからに怪しい。
米は良い。米は良いのだが、米の上に何やら黄土色のドロリとしたものがかかっている。
芋や人参、ネギのようなもの、それに何かの肉が入っているが、本当に食べれるのだろうか。
よ『・・・・・・・・・』
流石に座敷娘もためらっているようだ。
よ『お~いし~~~♡♡♡』
食べてたーーーーーー!!!
よ『なんでしょう!なんというか!なんといえばよいのか!兎に角美味しゅうございます!さあ!春風様も☆』
仁『・・・』
いい匂いがする。心とは裏腹に拙者の腹が"ぐう"と鳴った。
恐る恐る口に運んでみる。
ぱく・・・もぐもぐ・・⁈
仁『うまい!』
美味い!誠に美味い!こんなに美味い食べ物がこの世の中にあるとは!
未来国。やはり恐るべし!
そんなこんなで腹も膨れあとはヘンテコな生き物を連れ帰るだけなのだがどうやっても中から出ようとしない。
まったくあのヘンテコな体のどこにこんな力が・・・。
やれやれ。いったい何があったのやら。
先『いや~どうしちゃったんですかねー。こんなこと初めてですよ。』
流石の先見屋も困惑しているようだ。
先『まあ今日のところはあたしがお預かりしますんで。お二人はお帰りください。』
仁『頼む。』
よ『仕方ありませんね。では先見屋様。よろしくお願いいたします。』
先『はい。出てきたらお連れしますよ☆』
よ『(溜息)今日は久しぶりにもじゃちゃん(ヘンテコな生き物)と湯浴みをしようとおもいましたのに・・・』
バン!
押し入れの襖が開きヘンテコな生き物がよめ(座敷娘)に飛び付いた。
よ『もじゃちゃん♡』
仁・先(このスケベねこ(怒))
その後もヘンテコな生き物は落ち着かぬ様子で布団に潜り込み出てこない。まるで何かに怯えているようだ。
いったい何があったかは分からぬが取り敢えず一件落着である。
チリーン
またどこかで托鉢坊主の鈴が鳴っている。

ちょ~ん♪(拍子木の音♪)

ではまた次回☆
これにて御免(≧▽≦)