浪人仁さんふらり日記

殺陣好きの役者にござる。拙者が興味を持った事を江戸言葉を交えながら記述致すでござる。

仁さん夢物語☆十四 『未来』

早いものでもう十月。
めっきり寒くなった。
そろそろ山々が色づき始めるころでござる。
秋の日光は誠に美しいでござるよヽ(≧▽≦)/くはー
さて。『夢物語』はじまりでござる☆

ちょ~ん♪(拍子木の音♪)

ここは先見屋。
よろず骨董を商う小店である。
今日は穏やかな秋晴れだというのになぜかこの店の上にだけ黒雲が立ち込め時折稲光がしている。
実はこの店の奥には一風変わった一室があり中には奇妙な模様(形もだが)の怪しげな扉が佇んでいる。
一見すると壁に絵が描かれているような趣向になってはいるが実に怪しい。

先『ふんふんふ~ん♪きょうは楽しいお買い物~♪未来のお店でお買い物~♪さあて買い出し買い出し。未来に行くの久し振りだな~。それじゃー時空の扉でレッツゴー☆』
仁『先見屋。』
先『あら春風の旦那。良いお日柄で☆・・・わー!旦那!?何時からそこに!』
仁『ずっとおったぞ。それよりお主、なんだその出で立ちは。』
明らかに着物ではなく伴天連の着ている物とも違う。
先『あ、いや、これはですね、未来の正装ってやつでスーツって言いいます。まあお侍さんの裃のようなもんですね。』
仁『未来の裃。ほお~。するとお主。未来国に出向くのか。』
先『え、ええ、まあ。ちょっと買い出しに、』
仁『では拙者も参る。』
よ『わたくしも!』
仁・先『えっ!?』
仁『お、お主、何時からそこに!?』
よ『ずっとおりましたよ☆』
此奴、姿を消しておったな。
この娘は『よめ(不本意ながら拙者が名付けたことになる)』妖怪である。
拙者の家に無理矢理棲みついた座敷娘(もとは座敷童子)だ。
よ『未来国。何やら楽しげですね☆さあ、先見屋様。早く参りましょう♪』
先『あー、いや~。よした方がいいと思いますよ。お二人にはまだ刺激が強すぎるって言うか。もうちょっと未来の事知ってからの方が・・・』
仁『さればなおの事参ろう。』
先『は?』
仁『百聞は一見に如かずじゃ。』
よ『春風様が行かれるならわたくしも♡』
先『はあ~。しょうが無いな。どうなっても知りませんよ。』
仁・よ『やったー☆』
仁『で。未来国にはどうやって行く。馬か船か。』
先『この扉から。』
仁『なに、扉から⁉』
よ『まあ。これは扉なのですね。壁に絵が描かれているのかと思いました。』
仁『ふ~む。何とも怪しげな模様じゃな。』
先『この扉はあっちとこっちを繋ぐ扉でしてその名も『どこでもとびらー』って言います。』
よ『まあ、素敵な名前♡どんなところでも行けそう。ね。春風様♡』
仁『まあ名は良いとして何日かかる?』
先『あっという間です。』
仁『あっという間⁉そんなに近いのか!?』
先『まあここでぐだぐだ言っても始まらないんで、はい、行きますよー。』
扉を開くとまばゆい光に包まれる。
仁『ぬおおお!』
よ『きゃー!』
暫くすると光は収まり眼前には『未来国』が広がっていた。
仁・よ『○※☆□*△!!!』

・・・半刻後。

扉から出たとたんその場に倒れ込む拙者と座敷娘。
仁『な、な、な・・・な、な、な、な、な』
よ『階段が動いて、長四角い蟒蛇(うわばみ)から人が、ひとが・・・』
先『あーあ、だから言わんこっちゃない。』
暫くしてすこ~し落ち着きを取り戻した拙者と座敷娘はフラフラと先見屋を後にした。
一体あれはなんだったのか。人も町も見るもの全てが面妖奇っ怪摩訶不思議。あのような国がこの世にあろうとは。
思い出しても寒気がする・・・。
あんな所によくもしょっちゅう行けるものだ。先見屋恐るべし。
よ『春風様、春風様。少し休んでいきましょう。』
仁『そうじゃな。茶でも飲むか。』
すぐ目の前に茶店があった。
流石の座敷娘もあまりのことに今だ落ち着きを取り戻してはいないようだ。無理もない。拙者が気を失いそうになったく
よ『お団子とお餅、あと心太(ところてん)を下さいな♡』
仁『・・・』
よ『春風様、なにになさいます☆』
此奴化け物か。あ、妖怪か。
仁『では酒を頼む。』
よ『ではわたくしも。』
仁『駄目だ。まだ早い。』
よ『えー、ずる~い。春風様だけ。』
仁『お主は子供であろう。酒は大人になってから!』
よ『ぶー。800歳なのにー。』
全く、此奴に酒を飲ませたらどうなること・・・800歳!?
源『旦那。』
仁『む。』
声をかけてきたのは源七と言う裏稼業をしている男である。以前簀巻きにされて大川に投げ込まれそうになっていたのを助けた事がある。
以来(勝手に)拙者の子分となり色々と役に立ってくれる。裏稼業をやっているだけあってお上が知らぬ事まで知っている。言わば情報屋である。
仁『見つけたのか。』
源『ここじゃなんなんで』
そう言うと源七は人気のない所へ歩いて行った。
よ『春風様どなたです?』
仁『ちょっとした顔見知りじゃ。ちと話をして参る。』
よ『行ってらっしゃいませ。』
仁『うむ。(行きかけて)呑むなよ。』
よ『ぶー。』
茶店から少し歩くと雑木林がありひときわ大きな木の陰で源七は待っていた。
仁『見つけたのか?』
源『それがさっぱりで。さすがは盗っ人と言ったとこですかね。』
仁『そうか。』
源『尻尾は掴めやせんでしたがかわりに野郎が狙いそうなところの目星をつけておきやした。』
仁『流石じゃな。それで次に狙われそうなところはどこだ。』
源『へい。油問屋の高田屋で。』
仁『油問屋。』
源『へい。表向きはまっとうに商いしてる風ですが裏じゃ御禁制の品々を扱ってるって話でさぁ。』
仁『御禁制。』
源『だいぶ荒稼ぎしてるって話で。ほかにも高利貸しをやってるそうで、高田屋から金を借りて泣きを見たやつも大勢いるとか。』
仁『生真面目風の悪徳商人か。いかにもあ奴(のねずみ小僧)好みじゃな。』
源『おあつらえ向きに明日は新月でございやす。』
仁『盗みに入るにはもってこいか。ご苦労じゃった。』
拙者は手間賃に一分銀を手渡した。
源『ありがてえ。さすが春風の旦那!』
源七はうきうきした足取りで消えていった。
高田屋か。首尾よく"のノ字"が現れればよいが。
茶店に戻ると何やら人だかりがしている。
通行人『いや~てえした飲みっぷりだったね。三人抜きだってよ。』
通行人『あんなにかわいい娘さんがねー。人は見かけによらねえもんだ。』
むすめ・・・まさか⁉
人だかりをかき分け茶店に入るとそこには!
銚子を片手に高笑いをする座敷娘の姿が。
土間には飲み比べで負けたであろう男たちが酔いつぶれ転がっている。
よ『あ~はるかれさまおかへりなさい。みれくらさい!わたくひかちまひた♡さんにんにゅき☆』
仁『の、のんだのか。』
よ『あい♡おさけろはこ~んらにおいひいものなのれすね。わらくし気に入ってしまいまひた。きゃははははははははは♡』
仁『帰るぞ。』
よ『あい♡』
そう言い座敷娘は拙者に向かって大きく両手を広げた。
仁『なんだそれは。』
よ『歩けませぬ。おぶってくらさい♡』
仁『は?』
浪人といえども武士の端くれ。女人をおんぶなどできるか!


よ『らくちんらくち~ん♪』
仁『・・・』
おぶってしまった・・・
よ『きゃははは。きゃははは・・・きゃははははははは♡』
こやつ、笑い上戸か・・・
武士が女人(妖怪ではあるが)をおぶって歩くなど前代未聞。暫くの間、町の噂となり瓦版にまでなった。とほほ。

そして次の日。
源七の言ったとおり新月の夜を迎えた。

ちょ~ん♪(拍子木の音♪)

この続きはまた次回!
これにて御免☆