浪人仁さんふらり日記

殺陣好きの役者にござる。拙者が興味を持った事を江戸言葉を交えながら記述致すでござる。

仁さん夢物語☆24 賊其の弐

先日通り掛かった荒ら屋の壁に“梅改めよ”と書いてあった。
梅干し屋さんだったのかな~と思いながら通り過ぎた。
しばらくして、『あ、悔い改めよ』か☆
と、気付く。
うむ。今日も天下泰平でござるヽ(≧▽≦)/にゃー☆

では『夢物語』はじまりはじまり~☆
ちょーん♪(拍子木の音☆)

仁『静だな。』
月明かりに照らされた庭を眺めながら熱い茶を啜っている。
ここは呉服問屋『錦屋』の奥座敷である。
ひょんな事から用心棒をするハメになった。
それもこれも全てはあの賊のせいである。さっさと捕まってしまえ。
座敷娘はいない。
大の仲良しである錦屋の娘のところに挨拶に行くと言ってそれきりだ。
昨夜は拙者の話し相手になると来たくせにやれやれである。

それにしても流石は錦屋。見事な庭である。

とたとたと軽妙に廊下を誰かが歩いてくる。
この足音。どこかで聞いたことがあるような・・・。
と。奥座敷の障子が勢いよく開いた。
先『あーいたいた♡旦那ー♪』
仁『ぬ!?先見屋。なぜお主がここに???』
先『いやー、およめちゃんから春風の旦那が錦屋の用心棒してるって聞きましてね。』
仁『よめから。』
先『ええ。寂しそうだからよろしくって♪あ。これ差し入れ♪』
座敷娘(よめ)め。誰のお陰でこうなったと思っているのだ。
拙者は座敷娘に問答無用で用心棒をさせられているのだ。(それもこれもあの忌々しい賊のせいだが。)
それは兎も角、流石は先見屋。差し入れとは気が利く♪
その夜は未来国の話で大いに盛り上がった☆

次の日。
先『旦那ー☆珍しい人連れてきましたよー♪』
片『春風殿、お久しぶりでござる♪』
仁『片桐!?、どの。なぜお主がここに!?』
先『さーのみましょー♪あ、旦那はだめですよ。用心棒だから☆』
仁『待てまて!酒より片桐殿がなぜ・・・』
先『片桐さん、早く座って座って♪』
片『春風殿、お邪魔いたす♪』
仁『いや、なぜお主がここにい』
先・片『かんぱーい♡』
仁『・・・』

またまた次の日。

佐『かーうめぇ!流石は大店の錦屋さんだ。良い酒だぜ♪』
片『流石は江戸っ子。良い飲みっぷりでござる☆』
先『さあさあ遠慮はいりませんよ。どんどんやっちゃって下さい☆』
佐『すいませんね春風の旦那♪あっしまで御相伴にあずかっちまって♪この先見屋の旦那にばったりあっちまったのが運のつきでさー♪♪♪』
仁『・・・』
この者は大工の佐吉。拙者のいる長屋の住人である。
拙者は用心棒をしているのだが、なぜか酒宴になっている。拙者をぬきにして。
やれやれ。

またまた、また次の日。

さ『春風の旦那。陣中見舞いに来ましたよー☆手ぶらじゃなんなんでみんな手料理持ってきたんですよ。』
この女は“おさき”。佐吉の女房である。
その後ろに長屋の連中が犇めいている。
さ『さあさ、みんな。入った入った☆』
呉服問屋錦屋は今や宴会場になっている。
そして狂乱の宴が始まった。
拙者は用心棒をしていると言うのに・・・

そのまた次の日。

ドンチャンドンチャン♪
の『やす~ぅきぃ~♪♪♪』
佐『よっ!待ってました!やすきぶしの兄さん♪』
のノ字(のねずみ小僧)までまざっとる。
もう好きにしてくれ・・・
酒『賑やかですねー♪』
仁『ぬあ!?酒井!』
この酒井は南町の同心である。今頃は件の賊を引っ捕らえるために江戸中を血眼になって駆けずり回っている、はずである。
酒『あ~この煮物美味いな~☆里芋なんか絶品ですね♪』
仁『お主こんなところで何をしている!役目は、賊はどうした、賊は!』
酒『あー、その事ならもういいんです☆』
仁『もういい?どういう事だ???』
酒『実は昨日の晩、火盗改めが仕組んだ罠にまんまとひっかかってお縄になりました。』
仁『なに!それはまことか!?』
酒『ええ。廻船問屋の海屋に金塊があるって噂を流したんです。勿論火盗改めが仕組んだことですけど。それを真に受けて押し込んだところを御用。と言ってもあらかたそこで斬り捨てられ生き残ったのは“閻魔の源七”と言う頭目とその右腕の“橋三”の二人だけ。まあどちらも獄門でしょうけどね☆』
仁『そうか。捕まったか。』
酒『で、その賊なんですが、この錦屋さんを狙ってたらしいんです。』
仁『何、誠か!?』
酒『ええ。錦屋さんの間取りの絵図面がありましたから間違いないでしょう。ところが毎晩ドンチャン騒ぎしてるもんだから流石に凶悪な賊も押し込むに押し込めなくて、それでしびれを切らしてるところに海屋の噂を聞き付けてつい押し込んじゃったと。まんまと罠に掛かってあえなく御用。そんなわけです。あ、出汁巻き美味い♡』
仁『な、なんと・・・』
よもやこの錦屋が本当に狙われていたとは。
酒『さてと。じゃあ私はこれで。』
仁『うむ。わざわざすまなかったな。』
酒『いえいえ。錦屋さんに春風さんを用心棒にと推薦したのは私ですから。一応お耳に入れとこうと。あ、そうそう。そこのほっかむりの人。』
の・仁『(ドキッ!)』
酒『(ニヤリ)ドジョウすくいお上手だそうですね。今度ゆっくり見せて下さい。それじゃ♪』
そう言い残し酒井は鼻歌交じりで帰って行った。
のノ字(のねずみ小僧)は泥棒である。
一瞬、のノ字となぜか拙者も、ばれたかと思いドキッ!とした。
まったくこの酒井という男。何とも掴み所が無い。

ドンチャンドンチャン♪

にしても、このドンチャン騒ぎが功を奏するとは。世の中面白いものよな☆
拙者としては用心棒のような血生臭いことよりこちらの方がよいが。
なんにしてもこれでまた平穏な日々が戻ってきたわけだ。

仁『拙者も一杯やるか。』
よ『何を仰せです!春風様はお酒は駄目です。用心棒としての自覚は無いのですか。』
先『そうそう、およめちゃんの言うとおり☆旦那はお茶で我慢して下さい☆』
仁『用心棒はしまいじゃ。いましがた南町の酒井殿が来て賊はお縄になったと知らせてくれた。』
一同『ええー!!!!!』
佐『それじゃ酒盛りは?』
先『終わりでしょうね。』
片『残念でござる~・・・』
先『と言うわけで最期の宴です。大いに盛り上がりましょー♪』
一同『おー♪』
なぜそうなる・・・
まあ取り敢えずは一件落着である☆

ちょ~ん♪(拍子木の音♪)

ではまた次回☆
これにて御免♪