浪人仁さんふらり日記

殺陣好きの役者にござる。拙者が興味を持った事を江戸言葉を交えながら記述致すでござる。

仁さん夢物☆二十 幕開け☆

2021年!
新たな年の始まりでござる!
今年も元気にやりたいことを明るく楽しくやる!でござる(≧▽≦)きゃー☆

では、『夢物語』はじまりはじまり~☆
ちょ~ん♪(拍子木の音)

正月元日。新たな年の始まりである。
今日は座敷娘を伴い神田明神に初詣に来ている。
神田明神と言えば江戸三大神社の一つに数えられる。
ここにはかの有名な平将門公が除災厄除の神として祀られている。天下分け目の関ヶ原の戦で家康公が勝利を収めたのは神田明神、すなわち将門公の御利益に違いないと言われている。
ほかにも縁結びの神で有名な大黒様。商売繁盛の恵比寿様が祀られている。
そんなわけで神田明神の正月は御利益にあずかろうと願う人々であふれかえりすし詰め状態の大賑わいである。
座敷娘は初詣に来るのは初めてらしくいつになくはしゃいでいる。
まるでそこらの同い年くらいの娘と同じに見える。
だが、妖怪である。
・・・。
ずっと以前から気になっていたのだが、神や仏のいる神社仏閣に妖怪が立ち入っても大丈夫なのだろうか。
幸せを運ぶ座敷娘(元座敷童)は特別なのだろうか。
よ『・・・さま。』
よ『・・るかぜさま。』
よ『春風様!!!』
仁『はっ⁉』
座敷娘が困ったような顔で覗き込んでいる。
よ『どうなされたのですか。このようなところで立ちん坊になられて。皆さんお困りになられてございますよ。』
仁『ぬ。』
振り返ると拙者の後ろには参詣人の大行列ができている。
仁『おおう⁉』
そんなこんなで無事参拝を終え先見屋たちと待ち合わせの茶屋で一休みすることにした。
よ『春風様は明神様に何をお願いなされたのですか?』
座敷娘が名物の団子をほおばりながら聞いてきた。まるで子供の様である。
仁『願掛けは他人には秘密じゃ。』
よ『ケチ。』
仁『(カチン)』
待て!落ち着け拙者。今日は新年正月元日!この程度で、ましてや小娘相手に怒ってどうする、怒って・・・こやつ八百歳だった!
よ『わたくしは春風様のところに来てからとても幸せです。』
仁『む。』
よ『あの己が何者かわからず闇の中を彷徨っていたころ。仲の良い妖怪仲間からお人好しで面倒見のいい人間がいると聞きおもいきって訪てみましたが・・・。来てよかった。』
お人好し・・・その妖怪連れてこい!(怒)
よ『本当は不安で仕方なかったのですよ。でもお会いしてそんな悩みは吹き飛びました。ああ。この人はいい人だって☆』
仁『・・・』
よ『ですから明神様にお願いしたんです。この幸せな日々がずぅーとつづきますようにって。春風様!これからも末永くよろしくお願いいたします☆』
・・・ふ。
仁『相分かった。』
先『あ~いたいた☆おまたせしました!』
片『春風殿、お待たせいたした!』
丁度先見屋が片桐とともにやってきた。
仁『遅いぞ先見屋。』
先『すいません。鳥居のところで変なお坊さんにつかまっちゃって。』
仁『坊主?』
片『さよう。身なりからして旅の坊主と存じるがおかしなことに刀をしょっておりましてな。』
先『そのお坊さん、春風様とおよめちゃんの事を根掘り葉掘り聞くもんで困っちゃって。旦那お坊さんのお知り合い、います?』
仁『いや。で、何と答えたのだ。』
先・片『知りません。』
みんなで爆笑!
先『旦那たちお参りは?』
仁『もう済んだ。』
先『え~。およめちゃん何をお願いしたんですか?』
よ『うふふ。内緒♡』
先『あちゃ~☆』
片『ははは。さ、先見屋殿。某達も早く済ませましょう。』
先『そんなに急がなくても神様は逃げやしませんよ~。』
片『さあ急いだ急いだ☆』
まったく新年早々賑やかなことである。
願わくばこの平穏で楽しき日々が永く続きますように。

拙者のこの願いはもろくも打ち壊されてしまうのだがこの時はまだ知るよしもない。

チリーン。

つづく

ちょ~ん♪(拍子木の音)

ではまた次回☆
これにて御免(≧▽≦)☆

仁さん夢物語☆十九 親と子

今はもう師走。
あっという間の一年でござった。
なにやらあれやこれやとバタバタ落ち着かぬ年でござったな( ̄  ̄;)
拙者も色々と変化はござったが、お陰様で元気でござる☆

冒頭でも申したが、『師走』でござる。
朝晩の冷え込みはだいぶ厳しくなって参った。
処によっては雪が積もり本格的な冬が訪れてござる。
皆様風邪などひきませぬようお気を付け下され☆

然らば『夢物語』はじまりでござるヽ(≧▽≦)/にゃー

ちょ~ん♪(拍子木の音)

よ『とおさま、かあさま。一体如何なされたのですか?急にお越しになるなんて。』
座敷娘も拙者同様、河童と雪女の突然の来訪に面食らっているようである。
雪『いえね。この人(河童)がお前のことが気になって気になって仕方がないと言うから・・・』
河『いやいや。わしではなくお前が、』
雪『(ギラリ)』
河『!?そ、そ、そうなんじゃ。初めての人の世。どうにも心配になってなー、あははは・・・』
よ・仁『・・・』
雪『それにしてもよめ。春風様はお前が手紙に書いていた通りの方ですね。私達のような妖怪に良くして下さって。出逢ったのが春風様で本当に良かったですね。』
よ『はい!春風様は誠に良い方に御座います☆』
いや、押し掛けてきたのだ。
河『ふん。良い方?どうだかの。』
雪『あなた。まだ疑っているのですか。』
河『当たり前だ!人間など、こんな奴など信用できるものか!よめ!こんな奴とはサッサと縁を切ってわしらの処に帰ってこい!』
よ『いやです。』
河『な、な!わしらといるより此奴と一緒の方が良いと言うのか!?』
よ『はい。』
河『なにー!こんな奴の何処が良いと言うのだ!』
よ『春風様は何というか、ぼーっとしてて、ふわふわしてて、剣の腕は立つのにどこか抜けてて・・・あれ?良いとこが無い。』
仁『おい。』
河『はーはっはっは!それ見ろ!言わんこっちゃない!こんな出来損ないと一緒では出来損ないがうつるぞ!悪い事は言わん。家に帰るぞ!』
おのれ河童!何度も何度も・・・!
よ『えーと、えーと・・・あ!優しいんです!そう!とってもお優しいんです☆うん。』
仁・雪・河『(説得力がない。)』
よ『そ、そ、そうだ。とおさま、かあさま。せっかくお越しになられたのですから夕餉をご一緒に。丁度旬のものを沢山仕入れてきましたので腕によりをかけて御馳走いたします!春風様が☆』
仁『は。』
なぜそうなる。
河『人間の作ったものなど食え・・・』
どごん♡(河童が畳に食い込む音・・・)
河『・・・』
雪『そうしたいのですがそろそろお暇致します。』
よ『そんな、かあさま。』
雪『お前の顔を見れただけで十分。手紙を楽しみにしていますよ。』
よ『はい!』
雪『さ、あなた。』
雪女は河童を引き摺りながら表へ。拙者達も見送りに出た。
雪『よめ。』
雪女は座敷娘を抱きしめた。
雪『さびしくなったらいつでも帰っていらっしゃい。体に気を付けて。』
よ『はい。かあさまも。』
雪『長居を致しました。春風様もお体にお気を付けて。わたくしたちの処にもいらして下さいませ。ではごめん下さいませ。』
河『・・・人間。もごもごもご。』
仁『ん???』
河『ぬ~!娘をたのんだぞ!ふん!』
・・・。
う~む。まるで人の親のような妖怪達であったな。
それにしても疲れた。
長い一日であった。もう日が沈み始めている。
ふと見ると座敷娘は名残惜しそうに二人(?)の去った方を見つめている。
会うのがよほど久しぶりだったのか、いつまでも見つめている。
いつまでも、見つめて。
見つめ・・・。
仁『凍ってる⁉』
え!なんで!どうして!いや!どうしたらいい!どうしたらいいの!!!
だ~れ~か~たーすーけーて~~~!!!

長屋の向かいの屋根に人影があった。いつかの僧である。
僧『ほー。河童に雪女まで。にぎやかだな。』
チリーン(鈴の音)


ちょ~ん♪(拍子木の音)

ではまた次回!
これにて御免ヽ(≧▽≦)/にゃー☆

仁さん夢物語☆十八 『続々・親』

f:id:ookamizamurai:20201118202148j:plain

秋も深まりはらはらと落ち葉が風に舞う今日この頃。
皆様いかがお過ごしでござろうか。
拙者は元気でござるヽ(≧∇≦)/きゃー☆

では、夢物語はじまりでござる~☆

ちょ~ん♪(拍子木の音)

季節は秋。
晩秋の頃。
鮮やかに色づいた紅葉や銀杏がはらはらとその葉を風に踊らせている。
流石に朝晩は冷えるが日中は穏やかでともすれば汗ばむほどである。
拙者の家を除いては・・・。
寒い!!!!!!!
凍える様である!
それもそのはず。拙者の目の前には雪女がいる。
雪女たち(河童もいる)が来て直ぐはそれほど寒さは感じなんだが、外が暖かくなればなるほどその本能からか溶けまいとして自然に冷気が強くなる。
おかげで拙者の家だけまるで真冬の北国。極寒である。
仁『はっくちょん!』
雪『あら春風様。お風邪でございますか。季節の変わり目でございますのでお気を付け下さいまし。』
仁『・・・忝い(お主のおかげじゃがな)』
その時、戸が勢いよく開いた!
やっと座敷娘が帰ってきたのだ!
佐『だんなー!秋刀魚もってきやしたぜ☆こいつで一杯やりやしょう♪』
入ってきたのはこの長屋に住む大工の佐吉である。
仁『さ、佐吉か・・・』
佐『ありゃ。お客さんで。秋刀魚、ここおいときやすね。そいじゃごめんなすって。』
間の悪い奴め。
それはさておき。
河『・・・・・・・・・・。』
あれからしばらくしてどうしたわけか河童がおとなしくなった。
一言もしゃべらない。
まあ。口を開けば悪態ばかりなので黙っていてくれるのはありがたいのだが、こう押し黙られると気にはなる。
具合でも悪いの・か・な・・・。
仁『あ。』
河童のお皿の水が凍っている⁉
河童は皿の水がないと力が出ないとか、乾くと死ぬとか聞いた事はあるが、まさか凍るとは!
ほほ~。まさかね~。凍るとはのー。なるほどそれで元気がないのじゃな~。
ふっふっふっふっ。お気の毒(ちょっと意地悪)
河童は拙者に気づき何か言いたげだが言葉にならないようだ。
このままどうなるものか見ていたい気もするがこれ以上の面倒は御免だ。
そう思い仕方なく河童に熱々の白湯と湯に浸した手拭いを渡した。
河童は天の助けとばかりに手拭いを頭に乗せ白湯を口に運んでいる。

ほかほか手拭いを頭に乗せ大事そうに湯飲みを持つ河童。

面白い絵面である。ぷぷっ。

雪『あらあなた。また凍てついていたのですね!』
仁『また?』
雪『お恥ずかしい話なのですが、もう長く一緒にいるにもかかわらず、いまだにこの人(妖怪)は私の冷気にあてられその身を凍てつかせるのでございます。まことに情けない。』
河『母ちゃんそんなこと言ったって、ものには限度が・・・』
雪『お黙りなさい。凍らせますよ。』
河『母ちゃんそりゃないよ~。』
妖怪が夫婦になるのも命懸けじゃな。
河童のことが少々気の毒になってきた。
雪『娘の手紙に書かれていた通り春風様はよいお人でございますね。人ではないわたくしたちにもお気遣い下さるなんて。有難い限りです。さ。あなたからもお礼を。』
河『フン。』
ごつっ!(雪女が河童の頭を拳骨でドツイタ音。皿がわれるぞ・・・)
河『あ・・ありがとう・・ございま・し・・た。』
河童・・・がんばれ。
その時、戸が勢いよく開いた!
今度こそ座敷娘が帰ってきたのだ!
片『春風殿、釣りに参りましょう☆』
これまたこの長屋に住む片桐壮九朗であった。
仁『・・・』
片『やや!これはお客人でござったか。これは御無礼。ではまた日を改めて。御免。』
・・・。
河『まったく人間は騒がしいのお。』
雪『賑やかでいいじゃありませんか。それにしても遅いですねぇ。あの娘なにをしているのかしら。』
河『ふん。此奴に愛想をつかしてもう帰ってこんのではないか。』
仁『何を河童が!偉そうに。』
河『これだけ待っても帰ってこんのだ!愛想をつかされたに違いないわ!』
情けなどかけねば良かった💢
仁『言わせておけばこの河童め!表に出ろ!』
河『人間が!吠え面かかせてやる!』
またまた勢いよく戸が開いた!
よ『春風様見てください!行商に来ていたお百姓さんから旬のもの沢山買って参りました♡・・・あ!』
雪『よめ。』
河『よめーーー!』
やっと帰ってきたー(T T)
よ『とお様、かあ様!』
座敷娘はそっと秋の味覚の入った籠を置く。
よ『ごゆっくり。』
仁『まてーい!』
踵を返し走り去ろうとする座敷娘をかろうじて引き止めた。

つづく。

ちょ~ん♪(拍子木の音)

ではまた次回☆
これにて御免(≧∇≦)♪

仁さん夢物語☆十七『続・親』

f:id:ookamizamurai:20201118201805j:plain

季節は秋。
今日は誠にいい天気で朝から青空が広がり暖かな陽射しで正に秋晴れでござった。
秋と言えば紅葉。
紅葉や銀杏が色づき山々を華やかに飾る。
拙者は銀杏が好きでござる。
黄色い葉が青空によく映える。
黄色い絨毯を敷き詰めた銀杏並木を歩いていると何とも言えぬ幸せを感じる☆
銀杏の実は恐ろしい香りを放つがなんのそれもまた一興☆
f:id:ookamizamurai:20201118201617j:plain

さて。
『夢物語』始まりでござる。

ちょ~ん♪(拍子木の音)

天高く馬肥ゆる秋。
空は高くなり食べ物が美味しい季節である。
栗飯にキノコ汁。牡蠣に秋刀魚。考えただけでもよだれが出る。
そんなわけで”座敷娘”は錦屋の娘を伴い『秋の味覚』を堪能しに出かけている。
ねこ(ヘンテコな生き物)はあれ以来どこか落ち着かぬ様子で枕屏風の陰や押し入れの中に入り込んでいる。
それはさておき。今宵は少し贅沢に秋刀魚で一杯やるか。
そんなことを考えていると珍客が訪れた。
一人は齢で言えば四十半ば。気難しそうな男で、髷は結わずに総髪の撫で付け髪。口髭を蓄えており、よく言えば儒学者、悪く言えばインチキ易者と言ったところか。
連れの方は男の女房で齢は判らぬ(年齢不詳)が雪のように白い肌で妖艶な色香を漂わせている。透き通るような美人である。男とは真逆に微笑みを浮かべている。
だがどちらも人ではない。
察しの通り”河童”と”雪女”。”座敷娘”の親(育ての親、と言った方が良いか)である。
その証拠に男の頭の上には『お皿』がのっているし女からは凍てつくような『冷気』が流れてくる。
よりにもよって座敷娘が留守の折に来るとは・・・。
やれやれである。
取り敢えず二人(?)を中へ促し座布団と茶を出してみた。

河『娘が世話になっているそうだな。』

河童が口を開いた。
こ奴、儒者を気取っているのか随分と上からの物言いである。
儒者と言うのは儒学者の事で幕府では学問を司っている。孔子の教え(子曰くというやつ)を説いている。
儒者の中には林家のように若年寄と同等の身分の者もいるがそれは人の世での話である。
やれやれ。

仁『さして世話はしておらぬが棲みついてしまったのだ。連れ帰ってくれれば助かる。』
河『なんだと。人の娘を誑かしておいてその言い草はなんだ!』
仁『誑かすだと!』
河『人間風情がわしのむ・・・』

ガツン!(雪女が河童の頭に拳骨をくらわした音)

男『痛い!何をする⁉』
雪『申し訳ございません。うちの人はものの言い方を存じませぬので。大変ご無礼を致しました。』
河『何が無礼なものか!この人間がうちの娘をたぶ・・・』

ゴツン!(雪女が河童の頭を思いっきりぶん殴る音)

河『母ちゃん、皿!皿が!』
雪『自業自得です。失礼いたしました。おほほほ。』

なるほど。座敷娘は母親似か。
座敷娘は拳骨こそ振るわぬが雪女のこの威圧感はあの娘が拙者に無理強いをするときのそれと同じである。

雪『あなた様は確か、春風様。でございましたね。娘がお世話になっております。』
仁『ぬ?・・・いや大した世話はしておらぬ。が、なぜ拙者の名を?』
雪『娘の手紙で。』
仁『手紙。』
雪『御存じないでしょうが、娘はよく手紙をよこすのですよ。』
仁・河(知らなかった・・・)
雪『人の世に出て早々、春風様と言う心優しき方に巡り合えたと。』

巡り合うも何も、あ奴ははじめからここを目指してきたのだが・・・。

雪『おいしい物を食べたとか。人の娘の友達ができたとか。そうそう!この間は『未来国』と言う奇妙な国に行って大変な目にあったとか。それはもう楽しそうに。人の世に行かせて良かったと心から思っております。』
河『・・・』
仁『・・・』
雪『良い所に嫁げて本当によかった。(ホロリ)』
仁・河(ん?)
仁・河『・・・』
仁・河『嫁げて!?』
河『に、に、に、人間、貴様!どどどどどういう事だ!とつ、とつ、とつーーー!!!』
仁『待て、待て、待て!拙者も知らん!嫁に娶った覚えなどない!いったいどこでそうなった!』
雪『あら。手紙には『嫁』と呼ばれていると。』
河『人間きさまーーー!!!!!』
仁『ちがーーーう!』

☆只今大変取込んでおります。暫くお待ち下さい☆

~半刻後~

雪『さようでしたか。ではわたくしの勘違いでしたのね。』
仁『如何にも。誤解がとけて良かった。(あ~疲れた。)』
雪『わたくしとしては残念でございます。』
河『何を言うか!人間如きに娘はやらん。』
雪『人はあなたが思っているほど悪い物ではありませぬよ。』
河『なぜお前はいつもいつも人間の肩を持つのだ!』
雪『あなたが知りもしないで悪口ばかり言うからです。』
河『フン。そうか。お前の一族は人間の男好きだったな。』
雪『氷漬けにしましょうか。』
河『すいません。言い過ぎました。ごめんなさい。』

痴話喧嘩なぞよそでやってくれ。

河『兎に角、娘を人間になぞやらん!』

はなからもらう気などない。

河『大体なんだ、このあばら家は!わしらの屋敷の方がずっといいではないか!』
雪『そうでございますねえ。手紙には”お屋敷”と書いてありましたのに・・・』
河『あーダメだ駄目だ!こんな貧乏浪人など絶対ダメ!』
仁『おぬしら何様だ。』
河『あ?怒ったのか貧乏浪人。このくらいで怒るとはケツの穴の小さい奴だ。』
仁『おのれもう許さん!河童風情が!頭のてっぺん禿げのくせして!』
河『ははーん、これはお皿です。そんなことも知らんのかこのボケ浪人!』
仁『なにを!女の尻に敷かれたバカッパが!』
河『誰が尻に敷かれたバカッパじゃボケ浪人!』
仁『ボケボケボケボケ言わせておけば・・・』
河『言ったがどうしたボケ浪人!ボーケボーケボケ浪人!』
仁『このバーカバーカバカッパめ!』
河『このくそボケあほ浪人!』
仁『おのれ、バカッパ!覚悟いたせ!』
河『やるか!』
仁『やるか!』

スコーン!

仁・河『びくっ!!!』

拙者と河童の間に大きな”氷柱(つらら)”が突き刺さった。

雪『お二人ともおやめくださいまし。大の大人がみっともございませぬ。』

雪女は先ほどと変わらぬ笑みでそう言った。
・・・こわい。

仁・河『すいません。』

座敷娘よ。早く帰ってきてくれ・・・。

つづく。

ちょ~ん♪(拍子木の音)

ではまた次回☆
これにて御免(≧▽≦)☆

仁さん夢物語☆十六『親』

近頃甘いものが欲しくなる。
今に始まった事ではないが甘いものを食べると幸せを感じる☆
特に『あんこ』
ぼた餅(おはぎ)を食べると幸せ過ぎて天にも昇る気持ちになる( ´艸`)☆
あんこともち米の醸し出す素敵なハーモニー☆
ああ~ぼた餅バンザイヽ(^o^)丿

然らば『夢物語』始まりで御座る~☆

片『春風殿。釣りに参りましょう☆』
片桐が何時もの様に朝も早くから釣りに誘いに来た。
よ『春風様。今日こそお魚をお持ち帰りくださいましね♡』
仁『まかせておけ。』
片桐が誘いに来て座敷娘に見送られる。いつの間にか"何時もの事"になっている。
不思議なものだ。
チリーン
近くに托鉢の修行僧でもいるのか、鈴(りん)の音が聞こえる。
よ『さ。春風様もお出かけになられたし、もじゃちゃん♡』
何時もなら呼べば駆けより飛び付いてくるはずのもじゃ(ヘンテコな生き物)だが珍しく姿がない。
よ『もじゃちゃん?どこかへ出かけてしまったのでしょうか。』
座敷娘はなんとなく不安な気持ちになり、もじゃ(ヘンテコな生き物)を探し始めた。

片桐と共に何時もの道を何時もの池へと歩いていく。
"のねずみ小僧"の一件から十日ほどが経っている。
人違い(のねずみ違い)だったことで流石に数日抜け殻の様になっていた片桐だが国から金子が届いたことでどうにか気を取り直したようだ。
まあ役目で来ておるのだから国から金が出るのは当然である。
片桐自身も腹を決め暫く江戸で手掛かりを探すことにしたらしい。
片『ふんふんふ~んふんふんふ~ん♪』
鼻歌交じりで歩く片桐の背を見ていると本気で捜す気があるのか疑わしくなる・・・。
池についてみると珍しく誰もいない。普段なら顔見知りが一人、二人いるのだが。
片『春風殿は生まれはどちらでござるか?』
釣り糸を垂らし暫くすると不意に片桐が訊ねてきた。
仁『ん。』
片『いやなんとなく生粋の江戸者ではないような気が致してな。』
仁『ああ。豊前でござる。』
片『おお、さようか。拙者の国元とちこうござるな。どことは言えませぬが☆』
仁『片桐殿も九州のどちらかで?』
片『ふっふっふっ。さあて、どうでござろう☆』
仁『・・・(近頃拙者を弄ぶ者がふえてきたな)』
片『ときにご家族は如何してござる?』
仁『父は拙者が幼き頃に流行り病で。母は姉と妹と共に庶民として暮らしてござる。』
片『なんと!すると家督は?』
仁『父が亡くなったおりに武家はやめたからのう。拙者は血の気が多かった故、十九で武者修行と称して旅に出てそれきりでござるよ。』
片『さようでござったか・・・心配ではござらぬか?』
仁『なんの!拙者の母上はじめ家族皆強者でござるから一切心配ござらん!』
片『ははは!春風殿の家系は逞しいのでござるな☆』
よ『なにをお話です♡』
仁・片『びくっ⁉』
片『よ、よめ殿。いつの間に。』
突如として現れたよめ(座敷娘)に拙者達は心の臓が口から飛び出るほど驚いた。
仁『・・・(また姿を消しておったな)』
よ『うふふ☆楽しそうでしたがどんなお話をなさっていたのです?』
片『春風殿の国元の話でござるよ。』
よ『まあ!わたくしもききとうございます!』
仁『もう一通り話おわっ』
よ『最初からもう一度!!!』
仁『いや、だからもう』
よ『さあ!』
こうなると"よめ(座敷娘)"は一歩も引かない。
めんどくさい・・・。
片『と、ところでよめ殿はどうしてここへ?』
拙者の気持ちを察し片桐は話をすり替えた。いいぞ片桐!よくやった!
よ『そうでした!もじゃちゃんがいなくなったので捜しているところでした!』
もじゃちゃんとは先見屋に押し付けられたへんてこな生き物(拙者以外の者には猫に見える)の事である。ちなみに拙者は『ねこ』と呼んでいる。
仁『いなくなった?』
よ『春風様がお出かけになられた時から姿が見えずお屋敷(長屋)の周りを捜してみたのですがどこにも・・・』
確かに珍しい。ヘンテコな生き物はいつも長屋に居て座敷娘にべったりなのだが。
よ『さ、春風様も!どうせお魚など釣れないのですから一緒にもじゃちゃんをお捜しください。』
仁『何を言う!今から本気を出す・・・』
よ『捜しますよ(ギロリ)』
仁『はい。』
よ『では片桐様。御免あそばせ☆』
片『はあ・・・。』
拙者は座敷娘に無理矢理連れ去られてしまった。
片『春風殿・・・お気の毒。』


もじゃ(ヘンテコな生き物)がいそうなところを捜してみるが見つからない。
どうやら本当に何処かへ行ってしまったようだ。
よ『もじゃちゃんいったいどこに行ってしまったのでしょう。親元にでも帰ってしまったのでしょうか。』
仁『親元、か。』
あのヘンテコな生き物にも親があるのか疑わしい。
ふと妖怪にも親がいるのだろうか。座敷娘の横顔を見ながらそんなことを考えていた。
よ『春風様?どうなさいました。わたくしの顔に何か付いてございますか。』
仁『ん。いや、お主にも親はいるのかと思うてな。』
よ『まあ。何を仰せです春風様。妖怪とて親はおりまする。』
仁『さようか。ではおぬしの親はやはり座敷童か。』
よ『雪女です。』
仁『雪女⁉』
よ『はい。母は雪女、父は』
仁『雪男!』
よ『河童です。』
仁『かっ・・・(河童⁉)』
よ『わたくしたち(妖怪)は人の様に生を受けるのではありませぬ。人や獣が変化したものや古き物に魂が宿ったもの、純粋に闇から生まれたものなど様々です。』
物や獣は時が経つと妖怪になるとか、人は恨みや怒り、悲しみで鬼になるとか。そう言えば昔、どこかの寺の住職がそんな事を言っていた。
一口に妖怪と言ってもなかなかに複雑なようである。
よ『わたくしはどうやら闇から生まれたようです。闇の中に突然現れたわたくしを父と母が拾い座敷童として育ててくれました。それなのに・・・』
仁『・・・。』
よ『春風様。わたくしはいったい何者なのでしょう。』
よめ(座敷娘)は寂しそうな何とも言えぬ笑顔を見せた。
座敷童として育てられたはずがその道を外れいまや己が何者なのかさえわからぬとは。何とも切ない話である。
目の前にいるこの妖怪が儚く哀れに思える。
よ『(溜息)・・・そんな些細なことはいいとして。』
いいのか⁉
よ『もじゃちゃんどこに行ってしまったのでしょう。』
そっちの方がどうでもいい!!!
よ『春風様。もじゃちゃんが行きそうなところに心当たりはございませんか?』
今し方までのやり取りはいったい・・・。
よ『春風様だけが頼りです!さあ、心当たりを思い出してくださいませ!』
仁『う~むそうじゃな~。心当たりと言えば・・・おお!先見屋か。』
よ『先見屋様!そうでした。もともともじゃちゃんの飼い主は先見屋様でございましたね☆』
ほぼ忘れていたが、もともと"ねこ(ヘンテコな生き物)"は先見屋のところに居て拙者が(先見屋に)押し付けられ飼うことになったのだ。
その事は以前、座敷娘に話してある。
よ『さあ春風様、先見屋様のところに急ぎ参りましょう☆』
そう言えばこのところ色々あって(のねずみ小僧の騒動)先見屋に会っていない。別段会いたい訳ではないがあんな顔でもしばらく見ないと気にはなるものである。
よ『もじゃちゃん、先見屋様のところにいるといいですね。さ、急がないと日が暮れてしまいますよ!』
いや、まだ昼前じゃ。
よめ(座敷娘)に急かされながら先見屋に着いたのはちょうど昼であった。店の中から何やらいい匂いがする。
よ『さっきみーやさーん、こーんにーちは~☆』
店先からよめが声をかけた。すぐに奥から返事が聞こえた。聞き慣れた(聞き飽きた)先見屋の声である。
先『はーい。あらおよめちゃん♡旦那もご一緒で。』
よ『卒爾ながらお訊ね致しますが・・・』
先『もじゃんですね。来てますよ。』
よ『よかったー☆』
先見屋の話では朝方突然店に飛び込んでくるなり押し入れに入り込み出てこないそうである。
先『開けようにも中で踏ん張っててどうしようもないんです。と言うわけで取り敢えず昼餉にしましょう♪』
出てきた膳には見た事もない食べ物が。おそらくあの恐ろしい"未来国"の食べ物に違いない。
先『これは未来の食べ物で”かれーらいす”っていいます。あちらじゃ子供から大人まで嫌いな人はいないっていうと~ってもおいしい食べ物なんです☆さ、どうぞ召し上がれ♡』
仁『・・・』
見るからに怪しい。
米は良い。米は良いのだが、米の上に何やら黄土色のドロリとしたものがかかっている。
芋や人参、ネギのようなもの、それに何かの肉が入っているが、本当に食べれるのだろうか。
よ『・・・・・・・・・』
流石に座敷娘もためらっているようだ。
よ『お~いし~~~♡♡♡』
食べてたーーーーーー!!!
よ『なんでしょう!なんというか!なんといえばよいのか!兎に角美味しゅうございます!さあ!春風様も☆』
仁『・・・』
いい匂いがする。心とは裏腹に拙者の腹が"ぐう"と鳴った。
恐る恐る口に運んでみる。
ぱく・・・もぐもぐ・・⁈
仁『うまい!』
美味い!誠に美味い!こんなに美味い食べ物がこの世の中にあるとは!
未来国。やはり恐るべし!
そんなこんなで腹も膨れあとはヘンテコな生き物を連れ帰るだけなのだがどうやっても中から出ようとしない。
まったくあのヘンテコな体のどこにこんな力が・・・。
やれやれ。いったい何があったのやら。
先『いや~どうしちゃったんですかねー。こんなこと初めてですよ。』
流石の先見屋も困惑しているようだ。
先『まあ今日のところはあたしがお預かりしますんで。お二人はお帰りください。』
仁『頼む。』
よ『仕方ありませんね。では先見屋様。よろしくお願いいたします。』
先『はい。出てきたらお連れしますよ☆』
よ『(溜息)今日は久しぶりにもじゃちゃん(ヘンテコな生き物)と湯浴みをしようとおもいましたのに・・・』
バン!
押し入れの襖が開きヘンテコな生き物がよめ(座敷娘)に飛び付いた。
よ『もじゃちゃん♡』
仁・先(このスケベねこ(怒))
その後もヘンテコな生き物は落ち着かぬ様子で布団に潜り込み出てこない。まるで何かに怯えているようだ。
いったい何があったかは分からぬが取り敢えず一件落着である。
チリーン
またどこかで托鉢坊主の鈴が鳴っている。

ちょ~ん♪(拍子木の音♪)

ではまた次回☆
これにて御免(≧▽≦)

仁さん『夢物語』十五 のねずみ小僧再び

十五夜・紅葉・虫の声。
もっぱら拙者は"食欲の秋"
うおおおおおおお『焼き芋』食いてえぇーーー!
誠に秋とは良き季節でござる☆

然らば『夢物語』始まりでござる☆

ちょ~ん♪(拍子木の音♪)

盗っ人はお勤め(盗っ人働き)をする時『新月の夜』を選ぶ。
月のない闇夜がその姿を隠してくれるからだ。
『のねずみ小僧』も例にもれず新月の夜に好んで仕事をする。
拙者は今、問屋が立ち並ぶ通りの裏路地に身を潜めている。ここからは油問屋『高田屋』の裏手が良く見える。
いつもべったりくっついている座敷娘は昨日の酒が祟って床から出れないでいる。二日酔いとはあきれた妖怪である。
話しを戻す。
盗っ人と言うのはおおよそ裏手から忍び込み裏手から出ていくものである。中にはあらかじめ手下を店の使用人として潜り込ませ手引きをさせる賊もいるが、やはり堂々と表から入ることはない。
あ奴(のねずみ小僧)はやりそうだが・・・。
源『旦那。』
いつの間に来たのか拙者のすぐ後ろから源七が声をかけてきた。
仁『源七か。』
源『へい。大分冷えてきやしたんでこれを。』
そう言うと竹筒を差し出した。熱燗である。いったいどこから調達してきたのか。兎に角気の利く男である。
仁『これはありがたい。何時もすまぬな。』
源『なにをみずくせえ。』
初秋とはいえ夜は冷える。こんな時体を温めるにはこれが一番である。
源『それじゃあっしはあちらへ。』
源七は静かに闇へ消えていった。反対側を見張るためである。しかし今の身のこなし・・・
仁『まさか。』
まあ裏稼業の男である。盗人の真似事ができても不思議ではない。
時刻は子の刻を過ぎたころか。いっそう寒さが増してきた。
現れるとすれば・・・。
酒『春風さん。』
拙者はびくっとした!
振り向くとそこには南町同心 酒井なんとか(名前忘れた。)が不思議そうにこちらを見ている。
仁『お!これは酒井殿。如何された。』
酒『見回りです。春風さんこそなにしてるんです。まさか!お金に困ってついに盗っ人を☆』
・・・どこか楽しそうである。
以前"よめ(座敷娘)"の騒動の折、祝いを持ってきた同心がこの男である。
年は二十一、二で役人にしては珍しく陽気でさっぱりしている。
仁『(本当の事を言うと面倒なことになるな。そうだ!)実はうちの”ねこ(ヘンテコな生き物)”がいなくなってな。捜しているところだ。』
酒『あ~、あのふさふさの。そりゃあ大変ですね。私はまた”のねずみ小僧”でも探してるのかと思いましたよ。』
仁『⁉(どきっ)』
酒『でるんだよなーこんな真っ暗な夜に。じゃあ私はお役目がありますので。猫ちゃん見つけたらお報せしますね☆』
仁『すまぬな。』
酒『春風さんも”のねずみ小僧”見かけたら報せて下さいね☆』
仁『心得た。』
酒『”ねずみ捜し”に”ねこ捜し~”。あははははは☆』
へんな奴だ。
しかし二度も背後をとられるとは・・・修行が足りんな。
の『旦那~ひでえじゃねえですかい。』
再びびくっ!!!とした。
みると屋根の上から"のねずみ小僧"が顔を出している。
の『あっしと旦那の仲じゃねえですかい。それを役人に報せるなんざ。これじゃあ義理も何もあったもんじゃねえや。』
仁『それはお主の返答しだいじゃ。』
の『へ~。何をお聞きになりたいんで?』
仁『そこでは話しづらい。降りて参れ。』
の『お断りいたしやす。』
仁『何。』
の『今夜の旦那は何時もの旦那じゃねえ。降りたとたんにバッサリやられちゃかなわねえや。』
仁『・・・。』
の『で。何があったんです。』
仁『お主。正宗を知っておるか?』
の『伊達様の事で?』
仁『違う。』
の『酒?』
仁『違う!』
の『愛宕の正宗?』
仁『違う!誰だそれ!』
の『あっしの幼馴染で。』
仁『知らんわ!』
の『え~どちらの正宗さんですかい?』
仁『刀だ刀!大業物筆頭名刀正宗じゃ。』
の『・・・刀って名前があるんですかい⁉知らなかった。』
仁『嬲るか。』
の『ちょいと待っておくんなさいよ。そのなんとかっていう刀が一体どうしたってんですかい?』
仁『三年前、西方のある国から盗まれた。その刀を探し求め江戸までたどり着いた者がおる。』
の『はっ。刀一つに三年たあ恐れ入り谷の鬼子母神だぜ。』
仁『その者の言うには手掛かりは一つ。刀を盗んだ賊を追っていた者が言い残した言葉『のねずみ』』
の『!』
仁『今一度問う。正宗を知っておるか。』
の『存じやせん。』
仁『誠か。』
の『・・・』
冷たい夜風が二人の間を吹き抜ける。
のねずみ小僧はふわりと路地へと舞い降りた。
の『旦那あっしはね。盗っ人なんざやっておりやすが旦那にだけは嘘はつかねえって心に決めておりやす。正宗なんて刀ぁ見た事も聞いた事もねえが信用できねえってんなら仕方ねえ。(背を向けどんと胡坐をかく。)斬って下せえ!』
仁『・・・』
の『どうした旦那。遠慮はいらねえ。バッサリやっておくんなさい!』
仁『・・・いやすまぬ。人違いじゃ。』
の『・・・よかった~!ほんとに斬られたらどうしょうかとひやひやしましたぜ。』
仁『・・・(徐に抜刀。)』
瞬間、のねずみ小僧はひらりと屋根へ飛びあがった。
の『おおっとあぶねえ。ついでに言うとあっしは生まれてこの方江戸を出たこたございやせん。それにこの稼業始めたのはここ一年ばっかりのこと。あっしを捜してたってお人にゃわりいが人違い、いや野鼠違いでございやすよ☆』
仁『お主の他に“のねずみ”がおるのか?』
の『さあてね~。それじゃあっしはこれで。そのうちまた(酒を呑む仕草)うかがいやすんで』
そう言うとのねずみ小僧は闇の中へと姿を消した。
源『旦那。今のは。』
仁『のねずみじゃ。』
源『ええ!とっ捕まえないんですかい!』
仁『用は済んだ。行くぞ。』
源『ちょっ、旦那待ってくだせえよ。』
のノ字でないとすると正宗を盗んだ賊は一体何者なのか。
この事を片桐にどう話せば良いか。
う~む、困ったの~。
それにしても。
一晩に三度も背後をとられるとは。全く以て情けない・・・。面目丸潰れである。

次の日。拙者は真実を話すべく片桐を訪ねた。
仁『御免。片桐殿、おられるか。』
・・・返事が無い。
仁『片桐殿。』
片『は~・・・・い。』
なんだこの虚ろな返事は・・・
中に入るとまるで抜け殻のように項垂れる片桐の姿があった。
仁『片桐殿如何された。』
片『これを・・・』
片桐は文を差し出した。
仁『拝見いたす。』
それにはこう書かれてあった。
“正宗って刀をお探しのお方へ。
生憎あっしはお捜しの野鼠じゃあございやせん。仔細は春風様におたずね下さいまし。全て御存知でございやす。
この刀は餞別でございやす。こいつをもって国にお帰んなさいやし。
                          のねずみ小僧 ”

仁『片桐殿、これはいったい。』
片『目が覚めたら枕元に置いてござった。』
仁『さようか。』
片『春風殿。この文に書かれていることは誠にござるか。』
仁『残念ながら。』
片『さようでござるか・・・』
仁『して、刀とは?』
片『これにござる。』
刀を抜くと文字が刻まれてあった。

“ニセマサムネ”

あの馬鹿!

同じ頃。
浅草寺境内から一人の旅の僧侶が出て来た。
身なりは僧侶のそれだが余程長旅だったのか裾はすり切れ袖もボロボロである。首からは大きな数珠をぶら下げ頭には穴の開いた饅頭笠を被っている。
手に錫杖を持つのが普通だが異様なことに背中に刀を背負っていた。
僧『ほおー。久し振りに帰ってみりゃ、とんでもねえのが棲みついてるみてえだな。』
その目には狂気にも似たものが宿っていた。

ちょ~ん♪(拍子木の音♪)

この続きはまた次回!
これにて御免☆

仁さん夢物語☆十四 『未来』

早いものでもう十月。
めっきり寒くなった。
そろそろ山々が色づき始めるころでござる。
秋の日光は誠に美しいでござるよヽ(≧▽≦)/くはー
さて。『夢物語』はじまりでござる☆

ちょ~ん♪(拍子木の音♪)

ここは先見屋。
よろず骨董を商う小店である。
今日は穏やかな秋晴れだというのになぜかこの店の上にだけ黒雲が立ち込め時折稲光がしている。
実はこの店の奥には一風変わった一室があり中には奇妙な模様(形もだが)の怪しげな扉が佇んでいる。
一見すると壁に絵が描かれているような趣向になってはいるが実に怪しい。

先『ふんふんふ~ん♪きょうは楽しいお買い物~♪未来のお店でお買い物~♪さあて買い出し買い出し。未来に行くの久し振りだな~。それじゃー時空の扉でレッツゴー☆』
仁『先見屋。』
先『あら春風の旦那。良いお日柄で☆・・・わー!旦那!?何時からそこに!』
仁『ずっとおったぞ。それよりお主、なんだその出で立ちは。』
明らかに着物ではなく伴天連の着ている物とも違う。
先『あ、いや、これはですね、未来の正装ってやつでスーツって言いいます。まあお侍さんの裃のようなもんですね。』
仁『未来の裃。ほお~。するとお主。未来国に出向くのか。』
先『え、ええ、まあ。ちょっと買い出しに、』
仁『では拙者も参る。』
よ『わたくしも!』
仁・先『えっ!?』
仁『お、お主、何時からそこに!?』
よ『ずっとおりましたよ☆』
此奴、姿を消しておったな。
この娘は『よめ(不本意ながら拙者が名付けたことになる)』妖怪である。
拙者の家に無理矢理棲みついた座敷娘(もとは座敷童子)だ。
よ『未来国。何やら楽しげですね☆さあ、先見屋様。早く参りましょう♪』
先『あー、いや~。よした方がいいと思いますよ。お二人にはまだ刺激が強すぎるって言うか。もうちょっと未来の事知ってからの方が・・・』
仁『さればなおの事参ろう。』
先『は?』
仁『百聞は一見に如かずじゃ。』
よ『春風様が行かれるならわたくしも♡』
先『はあ~。しょうが無いな。どうなっても知りませんよ。』
仁・よ『やったー☆』
仁『で。未来国にはどうやって行く。馬か船か。』
先『この扉から。』
仁『なに、扉から⁉』
よ『まあ。これは扉なのですね。壁に絵が描かれているのかと思いました。』
仁『ふ~む。何とも怪しげな模様じゃな。』
先『この扉はあっちとこっちを繋ぐ扉でしてその名も『どこでもとびらー』って言います。』
よ『まあ、素敵な名前♡どんなところでも行けそう。ね。春風様♡』
仁『まあ名は良いとして何日かかる?』
先『あっという間です。』
仁『あっという間⁉そんなに近いのか!?』
先『まあここでぐだぐだ言っても始まらないんで、はい、行きますよー。』
扉を開くとまばゆい光に包まれる。
仁『ぬおおお!』
よ『きゃー!』
暫くすると光は収まり眼前には『未来国』が広がっていた。
仁・よ『○※☆□*△!!!』

・・・半刻後。

扉から出たとたんその場に倒れ込む拙者と座敷娘。
仁『な、な、な・・・な、な、な、な、な』
よ『階段が動いて、長四角い蟒蛇(うわばみ)から人が、ひとが・・・』
先『あーあ、だから言わんこっちゃない。』
暫くしてすこ~し落ち着きを取り戻した拙者と座敷娘はフラフラと先見屋を後にした。
一体あれはなんだったのか。人も町も見るもの全てが面妖奇っ怪摩訶不思議。あのような国がこの世にあろうとは。
思い出しても寒気がする・・・。
あんな所によくもしょっちゅう行けるものだ。先見屋恐るべし。
よ『春風様、春風様。少し休んでいきましょう。』
仁『そうじゃな。茶でも飲むか。』
すぐ目の前に茶店があった。
流石の座敷娘もあまりのことに今だ落ち着きを取り戻してはいないようだ。無理もない。拙者が気を失いそうになったく
よ『お団子とお餅、あと心太(ところてん)を下さいな♡』
仁『・・・』
よ『春風様、なにになさいます☆』
此奴化け物か。あ、妖怪か。
仁『では酒を頼む。』
よ『ではわたくしも。』
仁『駄目だ。まだ早い。』
よ『えー、ずる~い。春風様だけ。』
仁『お主は子供であろう。酒は大人になってから!』
よ『ぶー。800歳なのにー。』
全く、此奴に酒を飲ませたらどうなること・・・800歳!?
源『旦那。』
仁『む。』
声をかけてきたのは源七と言う裏稼業をしている男である。以前簀巻きにされて大川に投げ込まれそうになっていたのを助けた事がある。
以来(勝手に)拙者の子分となり色々と役に立ってくれる。裏稼業をやっているだけあってお上が知らぬ事まで知っている。言わば情報屋である。
仁『見つけたのか。』
源『ここじゃなんなんで』
そう言うと源七は人気のない所へ歩いて行った。
よ『春風様どなたです?』
仁『ちょっとした顔見知りじゃ。ちと話をして参る。』
よ『行ってらっしゃいませ。』
仁『うむ。(行きかけて)呑むなよ。』
よ『ぶー。』
茶店から少し歩くと雑木林がありひときわ大きな木の陰で源七は待っていた。
仁『見つけたのか?』
源『それがさっぱりで。さすがは盗っ人と言ったとこですかね。』
仁『そうか。』
源『尻尾は掴めやせんでしたがかわりに野郎が狙いそうなところの目星をつけておきやした。』
仁『流石じゃな。それで次に狙われそうなところはどこだ。』
源『へい。油問屋の高田屋で。』
仁『油問屋。』
源『へい。表向きはまっとうに商いしてる風ですが裏じゃ御禁制の品々を扱ってるって話でさぁ。』
仁『御禁制。』
源『だいぶ荒稼ぎしてるって話で。ほかにも高利貸しをやってるそうで、高田屋から金を借りて泣きを見たやつも大勢いるとか。』
仁『生真面目風の悪徳商人か。いかにもあ奴(のねずみ小僧)好みじゃな。』
源『おあつらえ向きに明日は新月でございやす。』
仁『盗みに入るにはもってこいか。ご苦労じゃった。』
拙者は手間賃に一分銀を手渡した。
源『ありがてえ。さすが春風の旦那!』
源七はうきうきした足取りで消えていった。
高田屋か。首尾よく"のノ字"が現れればよいが。
茶店に戻ると何やら人だかりがしている。
通行人『いや~てえした飲みっぷりだったね。三人抜きだってよ。』
通行人『あんなにかわいい娘さんがねー。人は見かけによらねえもんだ。』
むすめ・・・まさか⁉
人だかりをかき分け茶店に入るとそこには!
銚子を片手に高笑いをする座敷娘の姿が。
土間には飲み比べで負けたであろう男たちが酔いつぶれ転がっている。
よ『あ~はるかれさまおかへりなさい。みれくらさい!わたくひかちまひた♡さんにんにゅき☆』
仁『の、のんだのか。』
よ『あい♡おさけろはこ~んらにおいひいものなのれすね。わらくし気に入ってしまいまひた。きゃははははははははは♡』
仁『帰るぞ。』
よ『あい♡』
そう言い座敷娘は拙者に向かって大きく両手を広げた。
仁『なんだそれは。』
よ『歩けませぬ。おぶってくらさい♡』
仁『は?』
浪人といえども武士の端くれ。女人をおんぶなどできるか!


よ『らくちんらくち~ん♪』
仁『・・・』
おぶってしまった・・・
よ『きゃははは。きゃははは・・・きゃははははははは♡』
こやつ、笑い上戸か・・・
武士が女人(妖怪ではあるが)をおぶって歩くなど前代未聞。暫くの間、町の噂となり瓦版にまでなった。とほほ。

そして次の日。
源七の言ったとおり新月の夜を迎えた。

ちょ~ん♪(拍子木の音♪)

この続きはまた次回!
これにて御免☆

仁さん夢物語☆十三 青春☆

最近拙者はやる気が出ない。
“やる気”と言うものが何処かへ出掛けたまま帰ってこない。
何事も『やらねば!』と思い動き出そうとするのだが今一歩が出ない。
そんなわけでぐうたらしている。
さて。
少しは何かやろうか。

されば『夢物語』はじまりでござる~☆
ちょ~ん♪(拍子木の音♪)

季節は秋。良い天気である☆
まさに秋晴れ。
今拙者は片桐と共に何時もの池に釣りに来ている。
このところ三日と空けず釣りに来ている。その割に釣果は今一つであるが。

さて。片桐壮九朗がこの長屋に越してきてから十日あまりが過ぎた。
無論、“よめ(座敷娘)”にも会っている。
片桐は当然のように“よめ”を拙者の妻と勘違いし、一通りの騒動は終えている。が、まだどこかで疑っているようだ。
片『なかなか釣れませぬなー。』
仁『いや誠に近頃食いつきが悪くなった。これではまたあの娘に叱られる。』
片『ははー。春風殿は大分よめ殿の尻に敷かれているようですな。』
仁『んな!なにを馬鹿なことを!』
片『いやいや春風殿。夫婦円満の秘訣は奥方を立てること。尻に敷かれているからこそうまくいくのでござるよ。』
仁『まてまて片桐殿。何度も言うが“よめ”は拙者の妻ではござらぬ。知己の者から預かった・・・』
片『分かってござる。分かってござるよ。いや誠、敷かれる尻があって羨ましい限りで。』
片桐め、まだ疑っておる・・・。
仁『片桐殿は奥方はおられぬのか?』
片『おりませぬ。』
そう言うと片桐は寂しそうにしばらく水面を見つめていた。
片『実は許嫁がおりましてな。』
仁『おお、さようか。』
片『某が言うのも何ではござるがこれが誠に良い女で。色白で目鼻立ちがすっとしており、正に立てば芍薬座れば牡丹というやつでござった。』
仁『ほほう。絵に描いたような美人でござるな。』
片『いや誠に某などには勿体ない。てはー(//∇//)☆』
仁『片桐殿も隅に置けぬの~。このこの♪』
片『やめて下され♪やめて下され♪』
仁『で、その許嫁はいまどうされておられる?』
片『分かりませぬ。』
仁『分からぬ?』
片『さよう。今頃どうしているか、分からぬのでござるよ。』
仁『・・・』
池の真ん中で魚が跳ねた。
静かな水面に波紋がゆるりと広がっている。
片桐は遠い目で水面に消えるゆく波紋を眺めている。国元を思い出しているのだろうか。はたまた許嫁の顔を思い浮かべているのか。
しばらくして静かに語り始めた。
片『主命により国を出て三年。帰参はおろか手紙すら書いておりませぬ。』
仁『主命、でござるか。』
片『某し国元では殿の警護をしておりましてな。城中でも腕利きの者が総勢十人。持ち回りで役目を果たしておりました。某もそのひとりでござる。殿はたいそう刀がお好きなお方でな。中でも一番のお気に入りが大業物筆頭『正宗』でござった。』
仁『正宗!』
片『さよう。手に入れる為にどれだけの苦労をしたことか。殿はこの正宗を肌身離さずお持ちになっておられた。』
仁『正宗とは驚いた。拙者実物は見たことがござらぬ。』
片『誠に貴重な一振りでござった。それがあろうことか賊に盗まれたのでござる。』
仁『盗まれた!?』
片『その日は某のお役目の日でござってな継田という者と共に殿の御寝所の警護をしておりました。晩夏とはいえ肌寒い静かな夜でござった。』

ここから回想でござる~☆

片桐は御寝所の廊下に鎮座していた。
晩夏とはいえ蒸し暑い夜が続いていたが、その日はひんやりとした空気が漂い肌寒ささえ感じる。
片『少し冷えてきたな。』
夜空に浮かぶ青白い月がいっそう寒さを感じさせる。
片『継田様子はどうだ。変わりないか。』
継『は。変わりございませぬ。』
片『そうか。・・・寝るなよ。』
継『!・・・は。』
片『ふ。』
丑の刻を過ぎたころ異変が起きた。
片桐は闇の中を獣のような影が駆け抜けていくのを見た。
片『ぬ。(なんだ今のは。)』
目を凝らし闇の中を見回すがそれらしき影は見当たらない。
片『気のせいか。』
念のため御寝所の中を確かめようと思ったその時。
ドーン、バキバキ、キキーン、ゴバーン!!!
御寝所の中からすさまじい音が響き渡った!
片『殿!!!』
御寝所に飛び込んだ某は唖然とした。まるで大きな獣が暴れたような有様であった。
片『殿!殿は!』
継『御無事でござる!』
殿『な、なんじゃあれは!あの者共はいったい何者じゃ!』
片『すぐに捕らえまする!継田!』
継『は!曲者じゃ!であえであえ!』
殿『ああ!』
片『いかがなされました!』
殿『ない!ない!刀がない!』
片『刀。まさか!』
殿『予の正宗が、ない!』
片『なんとー!!!』

回想おしまい☆

片『そういった次第でその日お役に就いていた某と継田が刀を取り返す役目を仰せつかったのでござる。』
仁『なんとも気の毒な話でござるな。』
片『手がかりと言えば殿が聞いたと言う獣が如き影を追って行った者が言い残した言葉『野鼠』』
仁『のねずみ!』
片『それを手がかりに国元を離れて三年。ようやく実を結ぶ時が来たのでござる。その賊は、かの『鼠小僧』のまねをし義賊を気取り金持ち大名を狙う盗っ人!』
仁『ぬ~どこかで聞いたような・・・』
片『その賊の名は『のねずみ小僧』!』
仁『やはりそうかー!』
片『春風殿!御存知でござるか!』
仁『知ってるも何も近頃江戸を騒がしているコソ泥でござるよ。』
片『やはりそうかー!江戸にいるとの噂を聞きつけ遥々来た甲斐がござった!して春風殿!其奴は今何処に!』
仁『いや、それが分かれば苦労は致さん。なにせ盗っ人でござれば。』
片『うぬ~さようか。必ず引っ捕らえて正宗を取り返してみせる!』
仁『そのようないきさつでござったか。』
片『必ずや盗まれた正宗を取り返し持ち帰るでござる!さすれば某は帰参が叶い晴れて許嫁と、許嫁と、許嫁とー!!』
片桐は号泣。
仁『(泣くほど許嫁に会いたいのじゃな。)しかしそのような大事をなぜ拙者に。かの筋の耳に入れば一大事でござろう。』
片『何故かのう。不思議と春風殿には話してもよい気が致した。この事は他言無用にお願い致す。』
仁『無論でござる。』
しかし妙じゃな。のノ字が現れたのはここ一、二年の事。それまでは何の噂も聞いておらぬし。何にしても彼奴を見つけて聞くのが手っ取り早い。
片『春風殿!春風殿!引いてござる!引いてござるぞ!』
仁『うお!ぎょぎょ!』
拙者は珍しく鯉を釣り上げた☆
その後、片桐もなかなか立派なフナを釣り上げた。
今日は二人とも釣果がありほくほくで帰路についた。
あの物言いからすると片桐の仕えている国ははなかなかの家柄のようじゃな。しかし盗人風情に刀を盗まれるとは。流石に他言は出来ぬ。もし幕府にでも知れたらそれこそお国の一大事。下手をすればお取り潰しになりかねん。
じゃがあの“のノ字”が刀など盗むかのー。
そんなことを考えながら戸を開けた。
仁『今帰った。そーれ見ろ。立派な鯉が釣れたぞ!』
よ『お帰りなさいませ春風様☆ぱしゃぱしゃ』
仁『んな!?』
見ると部屋の真ん中に盥を置いて“よめ(座敷娘)”が“ねこ(ヘンテコな生き物)”と共に湯浴みをしている!!!
仁『な、な、な、何をしておるそんなところで!』
よ『何って。湯浴みにございます。』
仁『た、たわけ!湯浴みなら湯やへ行け、湯やへ!』
よ『湯やは“もじゃちゃん(ヘンテコな生き物)”と一緒には行けませぬ。かと言って、庭先では人目がありますので。ですからここに盥を置いて。』
仁『せ、せ、拙者がおるではないか!』
よ『春風様なら構いませぬ。それより一緒に湯浴みをなさいませ。お背中お流し致しますよ。』
ばん!(戸を閉める音)
よ『春風様?』
ね『にゃー』

顔が熱い。心の臓がばくばくしている。駄目だ。何処かで落ち着こう。
拙者は頭の中が真っ白になりフラフラと歩き出した。
春風仁志狼 青春真っ只中☆

ちょ~ん♪(拍子木の音♪)

ではまた次回!
これにて御免☆ヽ(≧▽≦)/くはー