浪人仁さんふらり日記

殺陣好きの役者にござる。拙者が興味を持った事を江戸言葉を交えながら記述致すでござる。

仁さん夢物語 四 妙ちきりんな物

暑くなった。
もう初夏でござるな☆
ここ何日かは夕立や通り雨が続いていたが今日は降ることはなかった。
6月に入ったのでもうすぐ梅雨。
じめじめは嫌いだが雨はそんなに嫌いではない。梅雨のお陰で潤うものがあるのでこれはこれで必要である。
が、降りすぎは困る( ̄∇ ̄;)

さて、久々に『夢物語』をいたそうか☆
ちょーん♪(拍子木の音)

久しぶりに町をぶらついている。
このところ梅雨の長雨で外に出るのも億劫であった。
長屋の住人も皆久しぶりに顔を出したお天道様に感謝しつつ布団を干したりたまった洗濯物をしたりで大忙しである。拙者も例に漏れることなく布団を干し洗濯、掃除を済ませ一段落つけてきた。
川の水かさが増している。流れも急で落ちればあっという間に流されてしまうだろう。
『君子危うきに近付かず』である。
茶店で団子を頬張りぼんやりしていると目の前を『妙ちきりんな物』に乗った『先見屋』が鼻歌まじりで通り過ぎていった・・・
それを見た瞬間、拙者を始めそこにいた全員が固まっていた。
すぐに皆我に返り今見た得体の知れない物の事を話し始めた。
拙者は代金をおくと直ぐに『先見屋』に向かった。
店に着くと先程の妙ちきりんな物が店先に置いてある。
近くで見てみると益々妙ちきりんである。大八車のような車輪が着いているのだが縦に並んでいる(大八車は横)恐らく馬に乗るように跨がるのであろうが細っこくて何とも奇妙な物である。はてさてこれはいったいなんであろうか・・・。
『あれ旦那。お久しぶりですね。』
そう声を掛けたのは先見屋である。
先『大した長雨でしたね。ほんとやんなっちゃう。』
仁『先見屋。これはいったいなんだ?』
先『あちゃー。見つかっちゃった。』
仁『茶店でこれに乗って走り去るお主を見て追いかけてきたのじゃ。』
先『あら見てたんですかい。後で長屋に乗り付けておどかしてやろうと思ったのに。ちぇー。』
仁『・・・(ろくな事を考えぬな。)』
先『見つかっちゃしょうが無い。こいつはね、未来の乗り物で『自転車』って言うんです。』
仁『自転車?』
先『これサドルっていってここに跨がるんですけどね、まあゆってみれば馬の鞍みたいなモンですね。』
仁『小さな鞍じゃな。』
先『あっはっは。で、これがハンドルっていってこうやると左右好きな方に曲がれます。』
仁『手綱みたいなものじゃな。』
先『正解!さっすが旦那。勘がいい!』
仁『どうやれば先程のように走るのじゃ。』
先『よくぞきいてくれました!こいつを走らせるのに肝心要なのがこれ!左右に付いたこの『ペダル』を交互に踏み回すことで後ろの車輪が回って前に進むって寸法です!』
仁『ほほう。なるほどの。よく出来たからくりじゃ。』
先『ホントはもっと格好よくて早いのが欲しかったんですけどこの人混みじゃそんなにゃ速く走れないんでこのくらいでいっかってこの『ママチャリ』にしたんです。』
仁『ままちゃりん???』
先『乗ってみます?』
仁『な!良いのか?』
先『良いですよ☆あたしが倒れないように後ろ持ってますから乗ってみて下さい。』
仁『すまん。絶対離すなよ。』
先『離しませんよ。じゃちょとこいでみましょう。ペダルに足のせて下さい。』
仁『こうか?』
先『右足のペダルをゆっくり踏んでみて下さい。』
仁『わかった。ゆっくりじゃな。』
先『そうそう!うまいうまい!じゃ今度は左のペダルを踏んで。』
仁『こうじゃな!』
先『いいですね旦那、筋がいい!』
仁『そ、そうか☆』
いつの間にやら人集りができている。
それはそうだ。
浪人が妙なものに跨がり騒いでいれば当然である。
先『じゃ今度は曲がってみましょう。ハンドルの右側を手前に引いて下さい。』
仁『手前に、引く!』
群衆『わー!』
先『わあ!引きすぎ引きすぎ!戻して!!!』
仁『おあっ!もど、す!』
群衆『わー!!』
先『わー!それじゃひだりいっちゃう!もどしてー!』
仁『ふんが!』
群衆『わー!!!』
先『わー!こいじゃだめ、ブレーキーーーー!』
ガッシャーン!
群衆『わー・・・』
先『あーあ、やっちゃった・・・』
拙者は見事自転車ごと先見屋の店に突っ込んだのであった。
めでたしめでたし☆

ではまた次回。
これにて御免ヽ(≧▽≦)/ひゃー
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